2016年4月16日土曜日

アルツハイマー病患者と認知症のパーキンソン病患者の潜在的学習と顕在的学習

若月 勇輝 ( 西尾病院 )


Title: Explicit and implicit learning in patients with Alzheimer disease and Parkinson disease with dementia.
邦題:アルツハイマー病患者と認知症のパーキンソン病患者の潜在的学習と顕在的学習

Journal: Neuropsychiatry Neuropsychol Behav Neurol. 1999 Oct;12(4):265-9

Authors: Kuzis G, Sabe L, Tiberti C, Merello M, Leiguarda R, Starkstein SE.

Abstract

目的:
皮質性認知症と皮質下性認知症の潜在的記憶と顕在的記憶システムの異なった障害について調査すること。

背景:
言語の刺激はアルツハイマー病患者で障害されると報告されたのが、パーキンソン病患者は運動技能の学習課題に関して、比較的に障害される可能性がある。

方法:
我々は、アルツハイマー病患者15名、認知症を合併したパーキンソン病患者10名、認知症ではないPD患者でない15名、年齢相応の健常の対照者24名に神経心理学的なバッテリー、顕在記憶(Buschke Selective Reminding Test、Benton視覚記銘検査、数唱)のテストと潜在記憶(Word-Stem Completion 課題と迷路検査)のテストを含んだ神経心理学的バッテリーを検査した。

結果:
アルツハイマー病群と認知症を合併したパーキンソン病患者群は、顕在記憶のすべての評価で類似した欠如を示し、そして認知症を合併しないパーキンソン病患者と健常の対照者群より有意に悪いパフォーマンスを示した。一方で、潜在記憶の評価に有意な群間さはなかった。
結論:
我々の研究は、認知症患者の顕在的な学習を重度に欠如した状態で、潜在学習が保存されることを示したが、いわゆる皮質性認知症で皮質下性認知症の、記憶欠如に異なった側面を示すことはできなかった。

URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10527111

【コメント】
認知症患者には潜在的な運動学習行える可能性を示した文献です。認知症患者の運動学習の可能性を示しており、リハビリテーション領域においても有益な報告と思いました。諦めずに認知症患者への臨床に取り組むことができそうです。

2016年4月2日土曜日

メルロ=ポンティの思想から私が思うこと

進藤 隆治(岡崎共立病院)

モーリス・メルロ=ポンティ(Maurice Merleau‐Ponty 1908年3月14日‐1961年5月3日)

著書には、「行動の構造」(1942年)や「知覚の現象学」(1945年)があり、新しい身体論を展開した。この新しい身体論は当時、リハビリテーションとは何の関係もなかった。しかし、1970年代後半になると、リハビリテーション治療に結びつけた人間が世界に一人だけいた。イタリア・ピサ大学附属カランブローネ病院の医師ペルフェッティである。

認知神経リハビリテーションはメルロ=ポンティが「知覚の現象学」で提言した。「知覚する身体」の回復に向けて治療が導入されている。彼の知覚の優位性の哲学にあるように、運動することよりも知覚を最優先する。(リハビリテーション身体論を参考に)

メルロ=ポンティの思想は認知神経リハビリテーション研究会のメンバーなら、すでに馴染みがあるだろう。しかし、この思想を深く理解している人はどのぐらいいるのだろうか。私も勉強会の資料制作に、久しぶりに宮本会長の著書である「リハビリテーション身体論」を手に取り、頭も悩ませながら理解しようと苦労している。わからないなりにもわかることもあるので、身体について書きたいと思う。

メルロ=ポンティは身体の両義性を述べる。つまり、運動・知覚により世界と相互作用しており、そこに自己にとっての意味が生まれてくる。リハビリテーション専門家にとって、その治療対象は何であろうと考えるとき、リハビリテーションの目的は「全人間的復権」であり、対象は「人」や「生活」や「その人らしい生活を送る」と誰もが返答をすると思う。しかしながら、機能について訓練を考える際に、運動で問題を確認し、筋・関節・骨といった要因に原因を求める傾向があるのが、身体障害領域の現状ではないかと思う。ようは、デカルト思想の身体二元論的な考え方が定着しているからであろう。身体と精神を切り離し考えられているからだ。例えば、整形外科の専門家だったら、骨折や外傷した部位を診て回復を図ることを目的とすると思う。しかし、リハビリテーション専門家は整形疾患でも受傷した「人」が対象となる。だから身体部位の回復を図るに留まらず、身体をどのように使うのか、身体を使ってどのように環境に適応するのか、その時に身体を介してどのような情動が生まれるのか、どのように身体は世界に意味を与えるのであろうかを基に身体を変えていく必要があるのではないだろうか。

認知神経リハビリテーションの講習会や勉強会に参加した先生から、「認知は難しい」と感想をよく聴く。私はその理由として、身体の捉え方を簡略化しない特徴を要しているからだと考える。しかし、身体を以下に簡略せずに患者と向き合えるかが、自分のスキルであり、患者を理解できるということになるのではないかと思う。突き詰めて行くことは、苦労の連続であるが、楽しみを見出すこともできる。リハビリテーション専門家にとって挑戦していく価値があることだと思う。

2016年3月15日火曜日

「感覚には感情があるんです」

首藤康聡(岡崎南病院)

「感覚には感情があるんです。」

そう話してくれたのは、ソフトボール日本代表の元監督、宇津木妙子氏。
彼女の講演会の中で語られていた一言です。

良い香りは心が落ち着くし、臭ければ嫌な気分になる。

好きな音楽は心が躍るけど、嫌いな音楽だと暗い気持ちになる。

大好きな人に触れられると安らぐけど、嫌いな人だと・・・

こう彼女が気付いたのは自分がチームの人間関係でうまくいかなかった時だそうです。相手のありのままを受け入れていこうという思いからそう考えるようになったそうです。決してアスリートだからといってソフトボールを行っている身体について考えたわけではありません。

さて我々は感覚に感情があるという事はきっとどこか無意識のうちに感じている事だと思います。
でもそこに彼女のように自ら気づき意識に上げ言語化するなんて事は普通できる事ではないと思います。

例えばそれはニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見する以前から物が下に落ちるなんて事は誰もが知っていた事に似ていると思います。

新たな気づきや発見は普段の何気ない日常の中に転がっているものかもしれません。

そう考えるといつもの臨床の中にはまだまだ多くの発見がきっと潜んでいるような気がします。

僕も彼女のように普段の臨床の中で自ら何かに気づきたい!

宝物を探すようにワクワクしながら臨床をやってみたい!

なんだかそんな気持ちになった彼女の講演会でした。

2016年3月3日木曜日

遂行機能障害

佐藤 郁江(岡崎南病院)

私の中で遂行機能障害と失行の違いが判らなくなっています。起こってくるメカニズムの違いはそれぞれ、前頭葉と頭頂葉の違いがあるのです。しかし、症状として現れるのは順番を間違えたり、行為が起こらなくなってしまったりと、臨床上での違いが私の中ではっきりと区別できていなかったように思います。そんな中で、注意と意欲の神経機構(日本高次機能学会教育・研究委員会編、新興医学出版社)の本の中で「外へ向かう注意の病理がいわゆる遂行機能障害であり、内へ向かう注意が再帰性意識の病理であって、これには、病態失認や、認知症における自己意識の障害を内在している」と書かれています。その外へ向かう注意を「支える神経基盤が、前頭連合野-頭頂連合野を中心とする遂行制御ネットワークである」となっているため失行と遂行機能障害は目に見える障害としては似てくるところもうなずけると思われます。しかし、治療するにあたっては問題が違うととられていかなければいけない点もあると思います。遂行機能障害は外へと向かう意識ができてこないために、開始の障害が特に目立ってくるのではと感じている。自分の中で整理できていない部分で、また皆さんと話しながら考えていきたいと思います。

2016年2月21日日曜日

診療報酬改正の時期に

尾﨑 正典(尾張温泉かにえ病院)

平成28年度診療報酬改正についての答申書が公開されました。リハビリに関しては、維持期のリハビリ・回復期のFIM・廃用・摂食嚥下・運動器リハなどの改正点が挙げられています。維持期リハの外来患者を通所リハ・デイサービスなど介護保険を利用したリハサービスへの移行を、どのようにしていくかを検討されている方も多いと思います。

先日、当院とは業務上関わりはないケアマネージャーと話をする機会がありました。

ケアマネは感じていることを言われただけだと思いますが「病院でのリハを行ったとしても、家に帰れば環境が変わって、出来ていたことも出来なくなり、またゼロからやらないといけないのだから・・・・・」という発言があり、私の中で、とてもひっかかりました。

患者の退院後の生活を良く知るケアマネの発言はまさに、現在のリハの大きな問題点であると思います。環境が変わってしまうと患者は自宅の環境に適応できていないということが、まさに現実となっています。すべての患者がそういうわけではないと思いますが、いくら病院でリハを行いFIMの点数を上げたとしても、患者は退院後、様々な環境に適応しなければならないのに、できていないということを真摯に受け止めていかないといけないと感じました。そのケアマネの意見としては、「訪問リハサービスを使い、実際の生活の中で日常生活の出来ないことを訓練するのが重要ではないのか」と言われました。他職種の視点は、重要なポイントやリハビリの課題がどこなのかを良くご存じだと思いました。

様々な環境に適応できるような身体に回復出来るように、どのように治療していき、在宅復帰後も、ケアマネの発言のような状況にならないようにしていかなければと改めて感じました。

今回の改正では回復期においては、FIMの点数という指標でリハの単位数が制限されます。結果が出ていないところには厳しく、病院の収益にも大きく関わってきます。

新たな問題点も多々発生していく予感がしますが、「どのような環境であっても適応し、生活できるような身体をセラピストは回復させていかなければならない」ということを忘れず、日々治療を行っていかなければと思います。

2016年2月1日月曜日

マツコの知らない世界 武井壮

荻野 敏(国府病院)

「マツコの知らない世界」はTBS系の人気テレビ番組だ。
http://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/

東海地方では火曜日の夜9時から放送されている。単純にマツコ・デラックスの番組は好きだ。有吉とのコンビや関ジャニの村上とのコンビネーションも心地よい、なにより的を得たコメントや多角的な視点からのコメントにはうならされることが多い(笑うことの方が多いけど)。そんななか、「マツコの知らない世界」は見逃さないようにハードディスクビデオに録画して見ている。内容の多くは家電とかおいしい食べ物のネタが多いが、たまに「おっ!」っと思わせる話題も出てくる。一番最近びっくりしたのが2015年11月24日に放送された「マツコの知らない学校では教えてくれないスポーツの世界」だ。ゲストは”百獣の王 武井壮”(笑)。しかし、この内容がすごかった。

武井壮が語るのは「スポーツが上達する武井流理論、ボディーコントロールの世界→自分の体を思い通り動かすこと」だ。武井壮は10歳の時、野球で全打席ホームランを打ってやろうと思ったが全然打たなかったそうだ。あたりまえっちゃああたりまえ。でも武井壮は不思議でしょうがなかったらしい。なぜか!!水を飲もうとペットボトルに手を伸ばして持ち、飲むことはできる。飲みたいって思って失敗したことがない。なのになぜホームランは失敗するのかと、不思議に思ったそうだ。好きな野球選手のフォームを真似してやっていたらしいが、ビデオを撮ってみてみたらフォームが全く違っていたことに愕然としたそうだ。そしてそれを何とかしなきゃいけない、「僕の体を頭で思った通りに動かす練習をしなきゃいかん」と思い、一番初めに「目をつぶった状態で両腕を水平な位置に上げる」ということに取り組んだ。自分では思った通りに動かしているつもりなのに実は数センチのずれがある。「これぐらいいいじゃない!!」とマツコは言うが、武井壮は「もしこれが野球のバッティングでホームランになる球が3センチずれたらファールチップになるでしょ?」と返す。確かに日常生活では大きな問題はないが、スポーツの世界などは認知過程のレベルではかなり高い精度の運動を要求されるだろう。これは現象学でいうところの”測度”の話だ。その身体運動のズレを修正しないでプレーするのと、修正してプレーするのでは成功する可能性がどちらが高いのかと武井壮は語る。それを10歳の時に考えていたんだから、武井壮はもう天才だ!!!!

武井壮は以前にも「笑っていいとも」という番組の中で、逆立ちができない小学生に授業を行っている。ユーチューブでも見れる。
https://www.youtube.com/watch?v=TXbUlN69ZP4

この中で武井壮は小学生に「なぜ逆立ちができないと思う?」と問いかける。もちろん小学生はわからない様子だが、とりあえず「腕の力・・・・・」と答える。そこで武井壮は質問を変える、「じゃあなんで今、立ててるの?」と問いかける。小学生は「・・・・・」。武井壮は「逆立ちが何でできないかっていうと、立っているときに何で立ててるかを考えたことがないからだ」と説明する。手を伸ばして手の先に地面があるということを想定させて「今自分が逆立ちをしているところを覚えちゃってください、こんな感じだな、あんまり力はいってないな、まっすぐ上向いているだけだなって」っとアドバイスする。そして実際にやらせてみて、まずは武井壮が小学生の足を持って「地面があるよ、まっすぐなってるよ」といったことを問いかけて、そして手を放すと・・・・・・・。なんと逆立ちができてる!!!小学生ははにかみながらも笑顔を見せる。いやあ、すごい武井壮!!!

イメージ、測度、身体感覚、身体イメージ、言語による対話の解釈・・・・・

果たして運動のプロフェッショナルと言われているセラピストで、どれだけの人が武井壮のレベルの実践ができるだろうか。

いやあ、”百獣の王 武井壮” 恐るべし!!

2016年1月16日土曜日

今年の自分は

井内 勲(岡崎共立病院)

2016年、去年を振り返りながら今年の目標をしっかりと、「言葉」として掲げて一年をスタートしている人も多いと思う。

今回は、1月2日の深夜にテレビ愛知(テレビ東京系)で放送された番組、「天才アスリート勝利の言葉~みらいのつくりかた新春SP~」から自身が惹かれた「言葉」を紹介したい。

番組の概要は、TV東京「みらいのつくりかた」の公式サイトなどから知る事ができたが、毎週スポーツ界を牽引し続けるアスリート、指導者、技術者たちが登場し挫折や逆境の経験から支えてくれたもの、そこから切り開いた「みらい」を紹介するという趣旨で放送されているようであり、今回はその特番であった。

内容は、昨年に活躍したアスリートの 「言葉」のちから にスポットが当てられラグビー日本代表の五郎丸歩と芥川賞作家の又吉の対談に始まり、テニスの錦織圭、体操の内村航平、白井健三などの言葉やその支えとなった周囲の人たちの言葉がたくさん紹介されていた。

それらの中から惹かれた「言葉」は沢山あったが今回は2人アスリートから紹介する。まずは錦織圭より、彼は「言葉が自分を助けてくれる、自分どう考えたらいいかきっかけになる」と語っていた。彼のコーチである、M.チャンは「言葉は選手にとってとても重要だ、言葉によって導かれ支えられ積極的になる、そしてそれは素晴らしい力になるんだ」とし、錦織に対して、「Believe yourself 絶対に勝てる」と同じ言葉を幾度となく伝え続けたそうだ。そして錦織はそれをきっかけとして一昨年の全仏オープンで準優勝した。しかし、昨年は思うような結果が出ずに、その全仏がまさかの一回戦敗退、悩む錦織の姿を見てM.チャンはこれまでの強気すぎる言葉を消し、「負けてもいいから思いっきりやれ」とかける言葉をかえた。それをきっかけに、吹っ切れた錦織はシーズン後半に持ち直し世界で8人しか出られないATPファイナルズに今年も選出された。M.チャンは「言葉」に対して、「戦いの中で選手と同じ考えや目標を共有する際、言葉はとても大きなインパクトを与える。ただし言葉の使い方はとても注意深くする必要があり、ポジティブすぎてもネガティブすぎてもダメなんだ」と述べていた。

次に体操の「ひねりの神様」こと白井健三の父親は、息子を「コミュニケーションから人の考えを探り、コミュニケーションから方法論を編み出している」と分析していた。そして内村航平との出会いや、コミュニケーションから「初めて自分のひねりを理解してくれる人と巡りあう事ができ、それがとても嬉しかったんだろう」と語った。そして「アスリートはトンネルだらけで、きついな、つらいな、大変やなという時にすごい人と出くわす、そしてその一言、言葉が急激に成長させる」と身振りを加えて語っていた。さらにM.チャンと同様に「最近は言葉を選んで息子と話すようにしている」と重ねていた。

こういった内容の番組は視聴する各々で様々な浸透の仕方があり、その時々の各自の背景と照らし合わせながら同じ言葉を聞いても違った影響力があると思う。また、自分自身の中でもセラピストとして、組織人、社会人として、父親としてなど色々な側面での思いと照合しながら自分の中に突き刺さるものも多い。

そして多くは現状の自分と期待したい自分との差異(葛藤)の中から生じてくる課題や信念のような思いであると考える。

皆さんはいかがでしょうか。(インターネットで視聴ができました。)