2016年8月1日月曜日

アルツハイマー病の微細運動技能の獲得と長期の保持

若月 勇輝(西尾病院)

雑誌: Brain Cogn. 1995 Dec;29(3):294-306.

著者: Dick MB, Nielson KA, Beth RE, Shankle WR, Cotman CW

目的と対象:
本研究は、様々な課題の量によって、中等度~重度のアルツハイマー病患者12名と健常高齢者12名の回転追跡課題の獲得と長期保持能力を調査した。

方法:
等しい人数のアルツハイマー病患者と対照被験者は、回転追跡課題の訓練(40試験/日)として40、80、120の試験を無作為に割り当てられ、練習実施後20分、2日、7日、37日に15試験の保持テストを行った。

結果:
ポジティブもしくはネガティブな効果を与えない追加した練習の間、パフォーマンスは最初の40試験に両群において有意に向上した。さらに、両群の対象者は、4つの保持テストを通して、最小限の忘却があることを示した。

著者の結論:
したがって、この結果は、アルツハイマー病患者は少なくとも1ヵ月間、運動技術を効果的に学習し、保持することができることを証明した。

URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8838387

2016年7月16日土曜日

教えることは難しい

進藤 隆治(岡崎共立病院)

この6月から7月にかけて、職場では新人先生の症例検討発表がある。自分も何か一つは質疑応答できるようにと思いながら参加している。今年は、自分自身も一人の新人の先生に相談役として関わった(当院では、新人に対して、バイザーと相談役がつく)。相談役は新人だけでなくバイザーとも話しを行いながら、新人がセラピストとして仕事が自律して従事できるかを模索する。またバイザーに対しても相談を通し指導を修正していくのも役割である。

今回、新人の先生とのやり取りの中で、次のようなことを言われていた。
「○○さん(自分の症例)のリハビリ目標を教えて下さい」
「訓練で何をすればよいか教えて下さい」
「何をしたらよいのかわかりません」
「わからないけど、何がわからないがわかりません」
「○○さん(症例)のことが書かれている文献ないですか」 etc…

目玉が飛び出るぐらい驚いた。とりあえずこれらの返答として、「その人に何をやったら正解かはわからない。なぜ?と疑問を持ち、その原因を探っていくことをしなければならない。」「その人に興味を持ち、どうすればよいかは探求していくことが必要だよ」と声をかけた。
私はふと想う。伝えた内容を自分がどれだけできているのであろうか?認知神経リハビリテーションも「問題-仮説-検証」を繰り返す作業を行うが、自分自身はどれだけ向き合えているのであろうか?
人に指導して気づかされることは多い。自分自身ももっと臨床推論を実行していかなければと思う機会となった。

それにしても、人を指導することは難しい。体調崩すぐらい思い悩むときもあるが、色々な先生に相談させてもらって、相手も自分も変われる指導ができればと思う。

2016年7月5日火曜日

ヒント探し

首藤 康聡(岡崎南病院)

先日、誕生日を迎え、なぜかふと学生の頃に担任の先生に言われた言葉を思い出しました。「どうして君は急性期の病院に行きたいと思うの?急性期だとリハビリを行った結果なのか自然回復なのかわからないよ。セラピストだったら慢性期で自然回復の可能性がない患者さんを回復させることにやりがいを感じるんじゃないか?」色々なご意見はあるとは思いますが、その時の僕は妙に納得し慢性期のある当院を就職先として選択しました。

慢性期病院で臨床を行って10数年が立ちますが、未だ満足のいく結果を得られたと思うことはありません。それでも寝たきりだった患者さんが一人で座ったり、平行棒内を歩いたり、スプーンを使って食事をしたりと回復はあり得ないと思われていた患者さんであったとしてもなんらかの改善を認める患者さんがいる事を知ることが出来ました。

「脳の可塑性の可能性を見た」この言葉は僕の臨床を見てくれたある先生から頂いた言葉です。決して自慢しているわけではありません。可能性は必ずあるという事。これをお伝えしたかったのです。可能性は回復を諦めたら消えてなくなります。回復を諦めない限り可能性は無限に広がります。

裏切られた期待に応えるために、その回復の可能性につながる『臨床のヒント』を探していきたいと思います。またこの文章が、皆さんが臨床のヒントを探すきっかけになって頂ければ幸いです。

2016年6月17日金曜日

思い出すこと

佐藤 郁江(岡崎南病院)

記憶力の正体(ちくま新書、高橋正延著)の中に思い出す練習の重要性という項目がありました。集中反復に比べ分散反復がより記憶に効果的であると書かれております。「有力な考え方によれば、集中反復ではそのままオウム返しに反復するだけでよいのに対して、分散反復の場合は、時間の経過のために、反復する内容の記憶が薄れているのでそれを思い出したうえで反復しなければなりません。つまり、集中反復は忘却が起こらないので反復内容を思い出す必要がないのに対して、分散反復では忘却が起こり始めているため、それを思い出す操作が必要になってくるわけです」とありました。

運動に対してではないのですが、動作の過去の記憶を思い出すことはその記憶を強化するために必要であるのではと考えることもできます。

ここでは忘却という視点もありました。忘却をすることで思い出す、思い返すといったことが起こっています。

運動において思い出す、思い返すといたことが、運動の再現の繰り返しなのかと言ったらそうではないと思います。

2016年6月1日水曜日

診療報酬改正後のリハ現場

尾﨑 正典(尾張温泉かにえ病院)

2016年度は診療報酬改定があり、回復期リハ病棟入院料にアウトカム評価が導入され、リハビリの効果がFIMの利得、在院日数が大きく関わり、維持期のリハビリに関しても、介護保険を利用したサービスに積極的に移行するようなルールとなりました。診療報酬改定のルールの中でどのように運営をしていこうかと試行錯誤されていると思います。

退棟時のFIM得点(運動項目)から入院時のFIM得点(運動項目)を引いた利得の獲得が回復期リハの重要なポイントとなり、日常生活動作の出来ることの獲得が重要視され、収益に大きく関わってきます。

認知神経リハビリテーションを学習され臨床展開されている方は誰もが感じたり、他のセラピストから「時間がかかる」「効果が目に見えてすぐには出ない」「そんなことより動作の獲得の練習を」「今の身体能力で出来ることを増やすように」「代償動作をだしても、それを使って生活できればよい」などとよく言われます。
 
今回の改正はさらに、厳しい環境になると予測されます。しかし、国の方針は方針として、その中でどのようにして、認知神経リハビリテーションの理論に基づいた治療を展開していくのかを考えて日々治療していかなければ、認知神経リハビリテーションの治療自体が出来ない環境になってしまう危険性があります。患者の真の願いに答える治療を行えなくなると、最終的には患者の不利益になってしまいます。限られた時間で、治療効果をだす必要性がさらに、問われることになっています。
 
認知神経リハビリテーションを学習し臨床展開されている様々な職場環境のセラピストがいます。一人職場で日々患者と向かい合っているセラピスト、分からないことだらけで悩み続けているセラピスト、様々な思いで、悩み続けているセラピストの皆さんが日本全国にいらっしゃると思います。
 
今年は7月2日~3日に福岡で学術集会が開催されます。そこには日本全国から集まり、議論し、学び、反省し、明日の臨床に繋げようとする認知神経リハビリテーションを学ぶセラピストが集まります。現在、臨床で困っていること、壁にぶつかっていることなど福岡の地で皆さんと色々な議題を話すことができます。

ぜひ福岡の地で、皆さんと患者の真の願いに答えられるように、共に学習していければと思います。

2016年5月15日日曜日

認知神経リハビリテーション入門

荻野 敏(国府病院)

カルロ・ペルフェッティ著 小池美納訳 2016年4月28日 初版第1刷発行 協同医書出版社

巻末には以下のような文章が書かれている。

“本書は、認知神経リハビリテーション(認知運動療法)に関わるカルロ・ペルフェッティの下記の著書から、「入門書」としての目的に沿って重要な概念の説明を引用・編集したものである”

下記の著書とは、『認知運動療法』『子どもの発達と認知運動療法』『認知運動療法講義』『脳のリハビリテーション』『認知運動療法と道具』『身体と精神』である。ページは100ページ弱で定価は2500円。エッセンスをピックアップしていて基本的な理論を学ぶことが出来る。本の帯にはこうも書かれている。

“認知神経リハビリテーション(認知運動療法)のもっとも基本的な概念、そして実践の原理を、カルロ・ペルフェッティによるテキスト群からその解説を引用し、編集した最新の入門書。理論のみならず、身体部位や道具別に基本的な訓練の組み立て方もわかりやすく解説した充実の内容”

ふんだんに図や写真を引用して、分かりやすく解説してある。訓練の例も具体的に挙げられていて、入門には最適な気がする。ベーシックのテキストとしても使えるのでは、と思ってしまう。

もし僕が新人のセラピストから「お薦めの認知神経リハビリテーションの本って何ですか?」と聞かれたら、おそらくこの本を薦めるだろう。値段的にもお手ごろだし、何より見やすい。福岡学会の時には書籍コーナーに並んでいると思う。皆さんも学会に参加して、ぜひ書籍コーナーを覘いて手に取って見てください。

2016年5月3日火曜日

新緑へパラダイムの拡張

井内 勲(岡崎共立病院)
 
暖かかい陽が多くなり爽やかな風が吹く5月、草木が芽吹くまさに新緑の候、皆さん様々なG.Wの過ごし方をされている事であろう。自分の職場は祝日が関係のない勤務スタイルなのでこの時期の休日は色々と貴重であり、その中の一つに普段はあまり手をかけない家の庭仕事がある。長い冬がようやく終わり一雨ごとに庭の草木が徐々にうっそうとし、朝カーテンを開けるたびに「そろそろやな…」とあちこちに伸びる草や隣の家に侵入する木の手入れに重い腰を上げるタイミングをはかっている。そもそも庭と言ってもそんな豪邸でもないので、その気になれば一日もあればけりがつく程度のなんだが、感じのいい庭なので手を入れるか入れないかでかなり雰囲気が違ってくる。それを承知で借りている家でもあるのでやはり自分が動かないといけないわけである。前もって天気を気にしながら予定を立て、今日こそはと先日朝から取り掛かった。

どこから手を付けるべきなのかと重い高枝切ばさみを持ち、枝の剪定から始める。お隣に切った枝が落ちないように十分に注意しながらとにかく目の前から進めていくのだが、一部に集中しその場からしか見えない部分にこだわってしまう。そして全体のバランスを見失いほどなく行き詰る。面倒だが一端離れて、角度を変えまた取り掛かる。そんなことを繰り返しながら時には木の下から見上げてみる、二階から眺めてみる。見る場所を変えると当然見え方が変化する。見え方が変わると視点も広がり、課題もみえ作業意欲も多少広がる。次に草取りへと鎌を持つ。カーテン越しに見ていた風景からさらに腰をかがめて庭を見る、さらに目立つ草から少し細かい場所の草を手入れしようと膝をつき、道具を持ち変える。垣根や低い木の根元などへと頭をかがめ視点を変化させる。次第にカーテン越しに見えていた庭が、角度を変え、視点を変えることでジブリの世界観のような様々な自然に出会える。今まで見えていた緑も鮮やかな緑から深いものまで、当然ながら単色ではない草木の種類や繊維の違いによっても異なる色合い、風味が見えてくる。そうなってくると苦痛から入っていった庭仕事も、発見、興味、楽しさへと変化する自分が存在し、そしてさらなる追求(こだわり)へと庭仕事に対する動機も変わっていった。庭作業を単純にうっそうとした草木をある程度、手入れするという視点は、こんなところにこんな新緑があるんだという発見や、もっと見栄えが良くなるには、さらに深みが引き立つには、と作業に対するパラダイムの転換までではないが、パラダイム追加、進化!?となった。まさに快の情動とやる気とのシステムといえよう。

今回の臨床のヒントは、雑感のような内容となってしまったが、この体験を患者の目線やセラピストの目線に置き換えて考えて頂きたい。もし患者が障害を呈した状態で生活しなければいけない、治療を受けなければいけない時、いかにしてこのネガティブな心身状態からの視点、視野の拡大を図るのか。いかにしてセラピストはそれの一助となり得るのか。そこにはもしかするとセラピスト自身が、今みえる視点、視野を広げる作業をしないといけないのかもしれない。それは自身をメタ認知する視点、いま行っている、行き詰っている視点からのパラダイムシフトも必要なのではないか。次回の5月21日に開催される第79回愛知県認知神経リハビリテーション研究会(ETCA)勉強会においては、新年度の会でもあり主旨としてもこれから認知神経リハビリテーションに取り組む方や、興味のある方にむけてコーディネートとされる予定である。自身としては、これからという方はもとより、現在取り組んでいる方も自身のパラダイムに対して本当にこれでよいのかと再考できる機会となればと思う。是非とも色々な方にご参加いただき、ディスカッションを拡張していきたい。