2012年1月15日日曜日

ソーシャルブレインズ

首藤 康聡(岡崎南病院)

ソーシャルブレインズ  -自己と他者を認知する脳-
開一夫/長谷川寿一(著)  東京大学出版会

自己や他者の認識はリハビリテーションにとって重要な1つの要因です。リハビリテーションで自己とは時として患者さんでありセラピストであるし、他者とは時として患者さんであり、セラピストです。その時その時の文脈によって、自己と他者がめまぐるしく入れ替わり、場合によっては一人の人間の中に同期する事だってあるかもしれません。或いは明確に2者を分ける事はできないのかもしれません。

正直よく分かりませんが、しかし、ここで明らかになっている事があります。それは、少なくとも2人以上の人間が存在し、そこには「社会」が存在するという事です。リハビリテーションが1つの社会を形成するのであれば「ソーシャルブレイン(社会脳)」を勉強して行く必要があるとは思いませんか?

この書籍は社会の基本的構成要素の「自己」と「他者」に焦点を当てて書かれており、その情報源は進化・比較認知科学、発達心理学や脳機能イメージング、さらにはロボット工学の分野からも考察が書かれています。僕自身、今までロボット工学が自己や他者の理解にどう繋がってくるのか疑問視していましたが、この書籍を読む事で少しその意味がわかった気がします。さらに、心の理論や自閉症についても触れられており、小児リハビリテーションへの理解も深まると思います。また、本書の中に散りばめられた“ topic”や“keyword”も十分楽しめると内容です。

さて、余談ですがこの書籍の執筆に当たった先生方の研究会に参加させていただいた事があるんですが、その時のディスカッションが衝撃的で今でも鮮明に覚えています。レベルが高いのはもちろんなんですが、皆さんが徹底的に意見をぶつけ合うんです。でもいったん休憩にはいると和やかに談笑されていたんです。リハビリテーションの勉強会に参加しているとその様な場面に遭遇する事はあまりない気がします。でも、必要な事だと思いませんか?