2011年5月15日日曜日

疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性

佐藤 郁江(岡崎南病院)

「疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性」
上村 晃弘  サトウ タツヤ 
日本パーソナリティ研究 2006 第15巻 第1号

「性格判断」はクレッチマーの気質類型論のように精神医学の中で考えられているものから、血液型占いといったものまで存在している。そんな時本屋で、血液型と脳機能の働きの関係があると考えている本がありました。しかし、その本にはなぜ働きが変化するのかが書かれておらず、よくわからないこととして、少し調べた時に
「疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性」
上村 晃弘  サトウ タツヤ 
日本パーソナリティ研究 2006 第15巻 第1号
を見つけました。しかしこの論文も実際に研究したものではなく、テレビの中で出てきている番組を検証している状態です。この論文の中には様々説が出てきます。
1.伝統的説明
2.進化論的説明
3.脳・糖鎖説
4.脳・部位説
5.気質の3次元説
6.後天性血液型
7.40パタン
8.生年月日との折衷説
9.カラーセラピー説
10.音響説
11.否定的説明
その中で始めに気にかけた説である脳・部位説で、A型は記憶が司る側頭葉や海馬が働きやすく、B型は発想・行動を司る前頭葉が働きやすく、O型は感覚を司る後頭葉・頭頂葉が働きやすく、AB型は海馬・側頭葉優勢になる時と、前頭葉が優勢になる時があるとしている。残念ながらここでどんな課題を行っているのかなどは不明であり、どのような時に働きやすいのかも不明である。これが思考過程の中での変化としては一つの指標として興味深いと思えたのです。しかし、筆者はそれぞれの説に対して否定的意見や矛盾点を述べています。そして、「血液型と性格の関係性について将来何かが見いだされる可能性については否定できないが、心理学者がそうした可能性を無条件に受け入れる必要はない」としています。このような様々な説の中が出てくるのははっきりしていないからであり、分類をすることで人をわかりやすくしたい、といった考えもがあるのでしょう。しかし血液型だけで、決定することはできるものではなくいろいろな因子が関係していることも知っています。そして、筆者の行った本当にどうなのかといったものの考え方が出ているものとして、私としても日々行っていくべきことのように思いました。また、血液型で当てはめるのはよくないのですが、一つの仮説として持っておくと、患者さんの理解につながるところもあると思っています。

2011年5月1日日曜日

木を見る西洋人 森を見る東洋人

尾﨑 正典(尾張温泉リハビリかにえ病院)

木を見る西洋人 森を見る東洋人
リチャード・E・ニスベット  ダイヤモンド社

最近ふと感じることがある。日本で行われている第三の医療と言われるリハビリテーションは「日本の文化」というものを考慮し行われているのかと。欧米では靴というのは上履き、下履きと区別されているわけではなく靴は靴として内、外の境界線は無い。しかし、我が国日本は玄関には「上がり框」が存在し、内と外を分けている文化である。「文化」非常に大きなテーマである。

認知神経リハビリテーション発祥の地イタリアの文化と日本の文化は当然違う。日本には日本の文化があり、イタリアにはイタリアの文化が存在する。そこで本書である。文化の違いを知るためにそして、異なる文化の人々の物の考え方について学ぶことは、日本文化を知ることであり、自分自身のものの考え方をより向上させることができるかもしれないと思い本書を読んでみた。

本書の中で著者は、東洋人のものの見方や考え方は「包括的」であり、西洋人のものの見方や考え方は「分析的」であるという。包括的思考とは、人や物といった対象を認識し理解するに際して、その対象を取り巻く「場」全体に注意を払い、対象とさまざまな場の要素との関係を重視する考え方である。他方、分析的思考とは、何よりも対象そのものの属性に注意を向け、カテゴリーに分類することによって、対象を理解しようとする考え方である。言い換えれば、東洋人は「森全体を見渡す」思考、西洋人は「大木を見つめる」思考様式を持っていると述べている。著者は様々な実験を本書の中で紹介し両者の違いを分かりやすく説明している。その中の1つの実験にアメリカ人と中国人の大学生に3つの単語(パンダ、サル、バナナ)を示して、これらのうちどの2つが仲間であるかを尋ねたところ、アメリカ人はパンダとサルを選んだが、中国人はサルとバナナを選んだ。中国人は、「動物」というカテゴリーよりも「サルはバナナを食べる」という関係を重視したのである。また、現代の東アジア人と西洋人の認知の違いについて予測を立てている。
・注意と知覚のパターン・・・・東洋人は環境に多くの注意を払い、西洋人は対象物に多くの注意を払う。東洋人は西洋人よりも、出来事の間の関係を見出そうとする傾向が強い。
・世界の成り立ちについての基本的な仮定・・・東洋人は実体、西洋人は対象物から成り立っていると考えている。
・環境を思いどおりにできるか否かについての信念・・・・西洋人は東洋人よりも強く、自分の思いどおりに環境を変えられると信じている。
・安定と変化に関する暗黙の仮定・・・西洋人は安定を、東洋人は変化を仮定している。
・世界を体系化する習慣・・・西洋人はカテゴリーを好み、東洋人は関係を強調する。
・形式論理学の使用・・・・・西洋人は東洋人よりも、論理規則を用いて出来事を理解しようとする。
・弁証法的アプローチの適用・・・明らかな矛盾に直面したとき、東洋人は「中庸」を求め、西洋人は一方の信念が他方よりも正しいことにこだわる。

なるほどと思える部分もあるが、すべての西洋人、東洋人が著者の述べるような人たちであるとは思わないし西洋、東洋と言っても様々国がある。しかし、本書によって異文化の中で生きている人たちは、違うものの考え方、見方をして生きていることを教えてもらったのは確かである。

認知神経リハビリテーションの発祥の地であるイタリアは西洋の国の1つである。
認知神経リハビリテーションがどのような文化、世界観の中で生まれたのかを少し垣間見ることができたような気がする。