2016年8月17日水曜日

手触りと“眼触り”の脳を探る

井内 勲(岡崎共立病院)

手触りと“眼触り”の脳を探る
雑誌: BRAIN and NERVE 67(6):691-700,2015
著者: 山本洋紀

著者は上記の雑誌にて脳と「質感」の特集の中で、自らの行っている眼と手による質感を探る脳機能イメージングの研究を紹介している。

15人のナイーブな健常成人の被験者に2種類の布を視覚刺激と、触覚刺激で提示し、現在呈示されている布が1つ前に呈示されたものより硬いか、柔らかいか、同じか、わからないかを判断し報告させる。それらをランダムな順番とタイミングで4種類(2種類の素材×[眼、手])おこない、その間の脳活動をfMRIで測定、脳活動データーにMVPAを適応して質感について3種類の脳表象(視覚、触覚、その共通表象)を全脳で探すという方法である。

結果的には見ていた布は視覚野だけでなく触覚野の活動からも解読でき、触っていた布は触覚野だけでなく視覚野でも解読できた。さらに、眼でも手でも質感が区別できる領域が連合野と感覚野(視覚野・触覚野)に見つかった。眼で見て手で触れるだけでなく、物を見るだけで、柔らかそうといった触覚的な印象を得たり、なんだか気持ちよさそうで触りたくなる、例えばふかふかのマフラーや赤ちゃんの丸いほっぺなど、眼で触り手で見ているかのような脳の振る舞いは、視覚と触覚の情報が視覚野、聴覚野の間を連合野を介して複雑に行き交う様で、冒頭で筆者はこれらを質感のクロスモーダル性であり、眼で触り手で見えるかのような脳の振る舞いは質感の感性面の顕れかもしれない、とも紹介している。

 以上、本文より本当に簡単に抜粋、要約してみたが、当然ながら論文には詳細な脳活動の部位やさらに従来の知見のまとめからの比較や、考察がしっかりと記されている。また異種感覚統合の場としての運動前野、頭頂連合野の前頭頂間野:AIP、腹側頭頂間野:VIP、側頭頭頂接合部:TPJなどと質感知覚、クロスモダール性との関係も論じてあり、自身にとって研究方法の理解に苦渋したが興味深い内容であった。

2016年8月1日月曜日

アルツハイマー病の微細運動技能の獲得と長期の保持

若月 勇輝(西尾病院)

雑誌: Brain Cogn. 1995 Dec;29(3):294-306.

著者: Dick MB, Nielson KA, Beth RE, Shankle WR, Cotman CW

目的と対象:
本研究は、様々な課題の量によって、中等度~重度のアルツハイマー病患者12名と健常高齢者12名の回転追跡課題の獲得と長期保持能力を調査した。

方法:
等しい人数のアルツハイマー病患者と対照被験者は、回転追跡課題の訓練(40試験/日)として40、80、120の試験を無作為に割り当てられ、練習実施後20分、2日、7日、37日に15試験の保持テストを行った。

結果:
ポジティブもしくはネガティブな効果を与えない追加した練習の間、パフォーマンスは最初の40試験に両群において有意に向上した。さらに、両群の対象者は、4つの保持テストを通して、最小限の忘却があることを示した。

著者の結論:
したがって、この結果は、アルツハイマー病患者は少なくとも1ヵ月間、運動技術を効果的に学習し、保持することができることを証明した。

URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8838387