2014年1月16日木曜日

様々な発見

尾﨑 正典(尾張温泉リハビリかにえ病院)

娘たちが剣道を始めたのと同時に、私も健康維持も兼ねて20年ぶりに再開しました。20年ぶりの稽古をしていくなかで、まず感じたことは自分が思っているとおりに身体が動かないという現実でした。過去に自分が動いていた感覚と身体動作が、かなりずれていることにびっくりしました。当然20年前の体力とは違うことは十分理解していますが、あまりに感覚がずれていることに愕然とし、まずはこのずれの修正に取り込むことが重要であると感じました。身体に注意を向け、何がいけないのか、どこにずれが生じているのか、肘、手、肩の動かし方、足の運び方など様々な動きに注意を向けて、身体の動きをしっかり感じながら稽古を行っている以前とは違う視点で稽古をしている自分がいました。自分の運動指令と動作がずれている感覚、このようなことは患者さんの中には当然のように存在しており治療においても、このずれの修正は重要な要素であると感じました。患者さんの発言に「以前とは違い、思ったように体が動かない」と言われる方が発症からの期間が短い方ほど多いと思います。私の感じた、身体動作とイメージのずれが生じる経験を剣道を通じて感じることができました。

話は変わりますが、武道のなかでは「見取り稽古」というものがあります。先生や先輩、強い選手の稽古や試合を見る稽古であり脳科学でいう、ミラーニューロンを使うことです。昔の日本人はミラーニューロンの知識はありませんが、上達の方法の一つとして稽古や試合をしっかり見取ることで可能になることを知っていたのだと理解できました。

現在私は、自分のイメージどおりの身体の動きができるように身体のずれの修正に四苦八苦しています。

再度、話は変わりますが、一緒に稽古している少年少女達にアドバイスする中で「たとえ」を利用するとわかりやすいと思い、自分が少年時代に指導して頂いたように竹刀を操作する場合、「釣り竿を投げる時を思い出して、竿の先が、飛んでいくときにどうなっているかな?竿の先が曲がってえさの付いた針が飛んでいくよね・・・」といった説明をしましたが、どうも分かっていない様子であったので、そもそも釣りをやったことがあるのかどうかを聞いてみました。ある少年が「はいあります、ゲームで・・・」という返答が帰ってきました。「ゲームで・・・・?」少年は釣りをした経験がないことが分かりましたが、釣りをした経験がない子供たちが多いことにびっくりしました。私が子供の頃、普通にやっていた遊びが現在は通じない。私の方も釣りのゲームをやったことがないのでお互いに共通性がないなか、どう対応していいのか迷ってしまいました。このような現実は、臨床場面でもあるような気がします。私たちの経験と患者さんの経験の違い、その時代の文化、言語など様々なことに共通性がないところがあるのではないかと改めて感じ、話をきちんと聞き対応していかなければならないと思いました。

認知神経リハビリテーションを学習することで得た知識が、20年ぶりに再開した剣道にかなり生かされています。内部観察、運動イメージ、ミラーニューロン、最近接領域、身体感覚、など。子供たちに指導するうえでも、以前とは違う方法で指導をすることができるように感じています。

あらゆることから学び、それを臨床に生かしていくスタンスである認知神経リハビリテーションから私の場合、剣道という武道に現在生かされています。