2011年12月17日土曜日

「わかる」とはどういうことか

佐藤 郁江(岡崎南病院)

「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学
 山鳥重(ちくま新書)

半分寝ながらだったかテレビを見ていたとき「直感」という言葉に引っかかって少し目が覚めました。その時のテレビは爆笑問題のニッポンの教養でした。話の内容としては危機を感じて逃げ出した消防士の内容で視覚情報における情報処理過程として意識できない上丘での視覚の存在の説明でした。私はこの脳科学分野は弱いと思い聞いていた。後で少し詳しく調べてみると視覚情報が直接上丘に入るほかに、聴覚の情報、前庭器官から頭の位置情報、視覚皮質ですでに処理された情報も入るとなっている。ここでテレビの話に戻りますが、逃げ出した消防士も危険を無意識のうちに感じていたのであろうと、それが直感であり、第六感でこの上丘での処理が早く働いたのではと説明していました。そして、これは過去の経験(視覚皮質で処理された情報:ここは後で私が加えた内容です)からもとにして作られているものだと説明していました。また、私は直感と聞いてまず思い出したのが『「わかる」とはどういうことか』(山鳥重)の「直感的にわかる」でした。その中で「その作り出す筋道が自発的な心理過程に任されていて、意識的にその過程が追いかけられないとき、われわれはほかに表現のしようがないので、直感的にわかった、という表現を使うのです」と書かれており、つながる部分を持つことができました。そしてその直感的にわかるで「答えは外にも中にもないのです。ちゃんと自分で作り出すのです」とあり改めて自分の中で行動における決定し、直感につながる経験をしていかなければと感じました。もちろん患者さんにもどのような経験が必要なのか?それを後で引き出せるような経験をしてもらうためにはどうしたらよいのかを考えている必要があると感じました。

2011年12月1日木曜日

脳活体育

尾﨑正典(尾張温泉リハビリかにえ病院)

「脳活体育」
運動が好きになる! 得意になる! 知性を育む
出版社:スキージャーナル

「脱・運動オンチ!運動スキル獲得の脳メカニズム」という題で柳原大(東京大学大学院准教授)はQ1からQ17の質問形式で述べている。

「運動オンチ」久々に私の脳の中を走った単語であった。この本の中では運動オンチの定義を「脳の中にある運動プログラムやモデルの生成と修正をめぐるメカニズムの不具合」「自分や他人の動作に伴う多様な感覚を正しく認識することができない」と述べられており、運動能力が向上するには、一流のアスリートの動きと自分とを比べたとき、その違いを正しく認識できるか、または自分が動く中で起きている誤りについて認識できているかに関わってくると准教授は述べている。小脳機能、ミラーニューロン、学習メカニズムの形成、情動など分かり易く述べられており、知識の再確認、整理を行うことができた。

次に「脳から見た効率的運動学習法」という題で篠原菊紀(諏訪東京理科大学教授)が述べている。印象的であったのが「心をこめてやりなさい」という言葉であった。心をこめることで、前頭前野を中心に脳内で活性化が起き、心を配った分、最初は動作に手間がかかりますが、結果早く獲得されると述べています。意識・無意識については「意識の占める割合はとても小さい。大海原に浮く一艘の舟が意識で、舟をうまく使うと海流を変えられることはあるという感じです。したがって、意識的には新たな動きをやろうと思っても、うまくいかないのが普通です。意図的に変えようと思っても動きはそう簡単に変えられない。努力はしつつも、なすがままにするしかない場合が多いし、そちらの方が当たり前なのです。ちょっと意識を使って無意識の変化を待てば比較的早くうまくいく。これがコツです」と述べる。使っている筋肉を意識しながら筋トレをした場合と意識せず筋トレをした場合では脳の活性化のレベルが違い、意識しての筋トレの方が活性化しているデーターを図を用いて表している。以前スピードスケート長野オリンピック、金メダリストの清水宏保さんは常にトレーニング中どこの筋肉を使っているのかを意識しながら行い「脳が疲れる」ということが「神の身体」という本の中に書かれていたことを思い出した。意識を向ける、向けないだけで同じ運動を行うのに脳の活性化が違うことが科学的に証明されていた。私たちセラピストはこの知見を利用し治療に取り入れなければいけない。治療を行う際には意識を向けるように指示する必要がある。限られた治療時間の中で、いかに効率的に時間を利用しなおかつ、結果をだすかに臨床家は取り組まなければならない。

「運動が知性を育む!才能を開く!先端トレーニング コオーディネーショントレーニング」荒木秀夫(徳島大学大学院教授)は現在、学校や地域のクラブチームで用いられるようになっているトレーニング方法は「コーディネーション」といわれており1970年代に旧東ドイツでつくられた運動理論をもとにしているが荒木教授は「コオーデション・トレーニング」という人の本来もっている能力に着目するということであり、部分的な能力の特化を目指さない。全人的な能力開発を目指す。このコオーディネーショントレーニングを北京オリンピック4×100mリレーで日本トラック史上男子初となる銅メダルを獲得した朝原宣治氏も取り入れている。荒木教授は今までとは異なる理論で結果を出そうとしている。この本の中では健常者の運動能力向上を中心に述べられており、脳の治療という視点で書かれた本ではないが基礎知識の整理、スポーツの世界でも全体性を考慮した理論が存在し展開されていることを知ることができた。リハビリテーション以外の分野からの視点をもっと学習し、治療に活かせるヒントを探していく必要性を感じた。