2013年2月16日土曜日

大人のピタゴラスイッチ

荻野 敏(国府病院)

「大人のピタゴラスイッチ」(NHK Eテレ,平成25年1月2日・3日放送)

ピタゴラスイッチって番組を知ってますか?

NHKのEテレ(教育テレビ)で放送されている子供向けの番組です。そもそもピタゴラスイッチは子供たちにいろんな考え方を楽しく伝える番組です。子供向けと言っても大人も十分に楽しめる内容で僕も一時期ハマっていました。ピタゴラ装置って言う仕掛けが秀逸でDVDも何巻か持ってます(笑)。

さて、今回取り上げる「大人のピタゴラスイッチ」は平成25年1月2日と3日の深夜に2回放送されました。第1回は「ちょいむず」で第2回は「かなりむず」です。大人のピタゴラスイッチですからちょっと難しめで、大人の知的好奇心をそそるような内容でした。皆さんは見ましたか?僕はもちろん録画して保存していますよ。

それぞれの回で、知っているようで実はよくわからないし、説明できないような単語がテーマになっています。第1回「ちょいむず」のテーマは「アルゴリズム」。さて皆さん、アルゴリズムという言葉を説明できますか?ピタゴラスイッチの中でよく知られているものに「アルゴリズム体操」や「アルゴリズム行進」があります。また、コンピュータのプログラムなどで時折でてくる用語でもある、その「アルゴリズム」です。アルゴリズムとは広辞苑では「問題を解決する定型的な手法・技法」と記載されています。大人のピタゴラスイッチでは「ある問題を解くための計算手順や処理手順」と説明されていました。ちなみにアルゴリズムの語源はアラビアの数学者アル=フワリズミーの名に由来します。第2回「かなりむず」のテーマは「機構」。機械内部の構造やからくりを意味します。「機構」にはさまざまなものがあり、「歯車」や「カム」や「リンク」などを思い浮かべると分かりやすいです。ちなみに「かなりむず」では「認知科学」も取り上げています。

このような、大人の知的好奇心をちょっとくすぐる番組が大好きで、よく見ます。物事の裏側には僕らが知らない、見えないものがたくさんあるということを実感できるし、知った上で物事を見ると違う解釈ができたりして楽しい。リハビリテーションにおいて患者の運動機能障害を解釈して、訓練を構築するのも、事象の裏側に存在する見えないものと相対することと同義だと考えています。僕たちはまだまだ知らないことだらけです。でも知ることは楽しいことでもあります。凝り固まった大人の頭をくすぐり、知的好奇心を抱かせてくれる番組でした。続編は未定らしいですが、年に何回かでいいので是非レギュラー化してほしい番組です。
(^_^)

2013年2月2日土曜日

間違いの効用

井内 勲(岡崎共立病院)

間違いの効用 H.L.ローディガー/B.フィン 
別冊日経サイエンス184 成功と失敗の脳科学, 44-49. (2012):日経サイエンス社

我々は患者に認知課題を設定する。それは対象が自らの身体を受容表面として外部世界との相互作用を構築していく上で、欠如しているであろう情報を問題とする。その課題の難易度の設定はというと・・・結構、苦渋する。

この著者は学習の効果について様々な研究より、正答を得ようと推測し失敗することが学習に役立つと述べ、学習を始める前にテストを受ける学生はその内容を、事前にテストを受けない学生より深くかつ長く覚えていると言っている。
学習において、「間違えない学習」を重視し学習条件を整えるよりも、間違わざるをえないような条件下に置かれた場面にこそ、よく学び、また長く記憶に残す事ができるという。

その事前テストによる学習の促進は、『問題に答えようとして間違えるという経験』にまさに由来しており、「間違えない学習」を心がけるのではなく、教師は学生達に対して、教材による学習を始める前にその主題に関する問題に答えるように仕向けるべき(そうする事は、必然的に多くの間違いを犯すことになる)であると述べ、またこの正しい答えを思い出したりゼロから考えたりするように自分自身を仕向けれる戦略にて、記憶力は高まると言っている。

まず少し時間を設けて自力で答えを見つけるようにする。そして何かの学習中に自分自身に課したテストに正解できなくても、その過程は無駄であるどこころか有益であり、ただ漠然と学習を続けるよりも、はるかに有益であるとしめている。

先の課題設定、最近接領域の見極めの難渋さに対して、まずは患者自身に課題に向き合って知覚仮説を立て、意識的な経験として探索をおこなうように仕向ける戦略が大切だということを再認識した。またもし難易度が高すぎた課題設定をしてしまったとしても、そこで患者自身がしっかり取り組んで結果、間違えるという経験をしたのならば、学習においてただ漠然と繰り返し訓練を重ねているよりも有益であり、今後の学習の可能性を充分に秘めていると感じさせられた文章であった。