2013年2月2日土曜日

間違いの効用

井内 勲(岡崎共立病院)

間違いの効用 H.L.ローディガー/B.フィン 
別冊日経サイエンス184 成功と失敗の脳科学, 44-49. (2012):日経サイエンス社

我々は患者に認知課題を設定する。それは対象が自らの身体を受容表面として外部世界との相互作用を構築していく上で、欠如しているであろう情報を問題とする。その課題の難易度の設定はというと・・・結構、苦渋する。

この著者は学習の効果について様々な研究より、正答を得ようと推測し失敗することが学習に役立つと述べ、学習を始める前にテストを受ける学生はその内容を、事前にテストを受けない学生より深くかつ長く覚えていると言っている。
学習において、「間違えない学習」を重視し学習条件を整えるよりも、間違わざるをえないような条件下に置かれた場面にこそ、よく学び、また長く記憶に残す事ができるという。

その事前テストによる学習の促進は、『問題に答えようとして間違えるという経験』にまさに由来しており、「間違えない学習」を心がけるのではなく、教師は学生達に対して、教材による学習を始める前にその主題に関する問題に答えるように仕向けるべき(そうする事は、必然的に多くの間違いを犯すことになる)であると述べ、またこの正しい答えを思い出したりゼロから考えたりするように自分自身を仕向けれる戦略にて、記憶力は高まると言っている。

まず少し時間を設けて自力で答えを見つけるようにする。そして何かの学習中に自分自身に課したテストに正解できなくても、その過程は無駄であるどこころか有益であり、ただ漠然と学習を続けるよりも、はるかに有益であるとしめている。

先の課題設定、最近接領域の見極めの難渋さに対して、まずは患者自身に課題に向き合って知覚仮説を立て、意識的な経験として探索をおこなうように仕向ける戦略が大切だということを再認識した。またもし難易度が高すぎた課題設定をしてしまったとしても、そこで患者自身がしっかり取り組んで結果、間違えるという経験をしたのならば、学習においてただ漠然と繰り返し訓練を重ねているよりも有益であり、今後の学習の可能性を充分に秘めていると感じさせられた文章であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿