2012年4月15日日曜日

いろんなことがラクになる!断捨離セラピー

佐藤 郁江(岡崎南病院)

やましたひでこ監修 あいかわももこ著 青春出版社

断捨離、ものから「捨てる」「断つ」「離れる」ことであるのですが、ただやみくもに捨てればいいのではなく大切なのは‘モノときちんと向きあう’こと、‘モノに感謝すること’と書かれていました。最初の断つという言葉から片付けが苦手な私がこの本自体を購入することがすくにはできませんでした。

この本自体は漫画家である著者が実際に経験したこととして書かれています。その息子さんの言葉で「使ってないけど、使ってる」とありました。捨てることにおいてもその人にとって要るものがあるため「人のモノには手を出してはいけません」となっていました。これは患者さんにも言えることなのではと考えました。患者さんにとって今まで行ってきたことを否定されるだけでは納得がいかないで捨てることはできません。もう一度患者さんにとって必要なのか‘患者さん’が向き合うことが大切になってくるように感じました。

また私の中でも情報においてもこのような断捨離の考え方が必要になってくるようにも思いました。特に「離れる」項目のところで、距離をとることで見えてくることがあるはず、とあり今までの事にこだわってしまうことで見えなくなってしまっていることがあると思いました。そして、モノが多すぎると使っていないものも存在していると書かれていました。情報量が多すぎてもパニックを起こしてしまうことがあるため、必要に応じて捨てる、断つことも必要では?と感じています。

もちろん新しい情報に触れて、自分の中で必要かどうかを考えるということだと思います。

始めに購入した目的は自分の家の整理が苦手だったからです。私は去年家の建て替えでいろいろなものを処分しました。それでも徐々に物は増えていきます。こちらも手が付けられなくなる前に整理をしていかなければと考えています。

2012年4月1日日曜日

ピアニストの脳を科学する

尾﨑 正典(尾張温泉リハビリかにえ病院)

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム
著者 :古屋晋一 出版社 :春秋社

ピアニストが演奏をしている画像見ていると実に巧みな手指の動きと異様なほどの速度、身体表現、正確なタッチ、滑らかな動作、何とも言えない感情を生みだす音色をいつもすばらしいなと思っていました。また、ピアニストが演奏している時の脳の状態や身体は、どのようになっているのかを考えていました。

著者は3歳からピアノを始め大学生の時に、ピアノの練習で手を痛めてしまいピアノを弾く身体の働きについて興味を持ち「どう身体を使えば、手を痛めずに幸せにピアノを弾けるのか」という問いに答えてくれる科学に、メスをいれた研究がはたしてあるのか、徹底的に調べた結果、ピアニストの身体の動きについて詳細に調べた研究は国内外を問わず、皆無に等しいことを知り絶望したそうです。しかし、著者は誰もやっていないのであれば、一からやるしかないと意を決して大学院から脳や身体について学習しはじめ、ピアノ演奏と脳と身体の研究を一貫して行っています。

著者は「ピアニストは、感性豊かな芸術家であるとともに、高度な身体能力をもったアスリートであり、優れた記憶力、ハイスピードで膨大な情報を緻密に処理できる、高度な知性の持ち主です。考えてみると実に不思議な能力をもった、世にもまれな存在なのです」とピアニストを表現しています。

第一章の「超絶技巧を可能にする脳はいったいどのようになっているのか」の中でピアニストの脳機能について以下のように語っています。
・ピアニストとピアノ初心者で比較した場合、小脳の体積が5%大きい,
・一日の練習時間が長いピアニストほど小脳の体積が大きい。大脳基底核の被殻が小さい。
・指の動きを思い浮かべるイメージ・トレーニングの有効性。
・ピアニストがピアノの音を聴いている時には音を聴くための神経細胞だけでなく、指を動かすために働く脳部位の神経細胞も同時に活動している。
・間違った鍵盤を弾くおよそ0.07秒前に、帯状回皮質から「ミスを予知する脳活動」がおこりミスタッチする際に打鍵する力を弱める。
・他のピアニストが演奏しているビデオ映像を音を消した状態でみせているにもかかわらず聴いているピアニストの脳内では音を聴くための神経細胞が活動している。目からの情報をおとの情報に変換する脳回路がある。トランペット演奏者は唇の皮膚の感覚を音の情報に変換する脳回路がある。など
第一章の中の説明を単語化すると
・異種感覚情報交換・運動イメージ・視覚イメージ・フィードフォワードシステム・フィードバックシステム・小脳学習・カクテルパーティ効果・ワーキングメモリー・脳の可塑性・環境との相互作用など、私達が臨床中で患者を治療する場面で常に考えていることに結びついています。

ピアニストの3大疾病として①腱鞘炎②手根幹症候群③フォーカル・ジストニアがあるそうです。フォーカル・ジストニアとは多くの場合、痛みやしびれはなくピアノを弾こうとすると、意図せず手指の筋肉に力が入って固まってしまったり、動かそうと思っていない指が動いてしまったりと、思い通りに手指を動かせなくなる病気でピアノを弾こうとすると薬指と小指が意図せず丸まってしまう症例があり、発症してしまい演奏家生命が絶たれてしまう人は少なくないそうです。このフォーカル・ジストニアの治療がいくつか挙げられており、ボツリヌス投与、CI療法、バイブレーション療法などが現在行われていますが、完治につながる治療法は確立されていないとのことです。

皆さんなら認知神経リハビリテーションの理論を用いてどのように治療しますか?
言語記述・運動イメージ・視覚イメージ・健側との比較・スティック課題・重量課題、様々な治療仮説が立てられると思います。

この書籍は、「ピアニストの脳を科学する」という表題ではありますが「ピアニスト」を多角的な見解で述べられており、自分自身の音楽、音色の聴きかた、音楽家の身体の見方が変わりました。ピアニストの高度な技術、身体能力、豊かな感受性、脳機能などにより感動を生みだす演奏が奏でられている。その水面下では、様々な障害に苦しんでいることを知ることができました。