2015年6月15日月曜日

失敗学のすすめ

佐藤 郁江(岡崎南病院)

『失敗学のすすめ』
畑村 洋太郎著 株式会社 講談社

失敗学は、失敗を否定的にとらえるのではなくプラス面に着目してこれを有効利用しようという点により生まれてきたとされています。つまり不必要な失敗を繰り返さないとともに、失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぼうというのが『失敗学』の趣旨なのです。

これは、現在医療現場にいる私たちの中ではヒヤリハットなどといわれる、インシデントの分析をし、次のインシデント・アクシデントを起こさないようにするといったところからも経験していることであると思われます。

では、患者さんにとっての失敗とは何なのかと考えてみましょう。そうすると、「思ったようにできなかった」といったようなことが出てくると思われます。その思ったようにできなかったといったことが出てくるのであれば、目標としていることが患者さんの中にあり目標との対比ができている可能性が高くなってくると思われます。それを、患者さんの中での必要を考えていくことができるようになってくると考えることができます。

この本の中では、失敗はさらに未知との失敗と発展していくためのものになっています。しかしその前に、『本の中で知識の必要性を体感・実感しながら学んでいる学生ほど、どんな場面にでも応用して使える真の知識が身につくことを知りました』とあり、患者さんにとって必要な知識を自分で選択できるようにしていけることで、生活の中での改善にもつながっていけるのではと、考えています。

2015年6月3日水曜日

ミラーニューロンシステムと記憶と世界剣道選手権大会

尾﨑 正典(尾張温泉かにえ病院)

2015年5月30日(土)に日本武道館で行われた第16回世界剣道選手権大会に子供達をつれて日本代表を応援に行ってきました。剣道には稽古の一つの方法に「見取り稽古」というものがあります。実際に相手と行う稽古ではなく、先生方や先輩方がされている稽古を見て学ぶ稽古の事を言います。初めてミラーニューロンシステムを学習し、その意味を知った時「見取り稽古」の重要性を理解出来た時のことは、今でも思い出すことが出来ます。世界一を決定する舞台である世界選手権は見取り稽古の絶好の機会でした。世界56カ国の地域から厳しい国内予選を勝ち抜いてきた選手たちの立ち姿は美しく、強い剣士たちです。子供たちの脳も私の脳も、とてつもなく働いていたことでしょう。伝統文化の中で先任たちの遺していかれたことの中に、現在の科学で実証されるもの、まだ実証されていないもの、私の気がつかないところで多々残っていることだと思います。

この日の帰り路に関東地方に地震があり、丁度、九段下の地下鉄のホームにいました。当然列車は止まり、自宅に帰宅したのは深夜0時をまわっていました。この出来事はエピソード記憶として子供たちの脳に記憶され、何十年たっても「世界選手権を観戦した帰りに、地震があり、列車が遅れて、深夜に帰宅した」ということを忘れないでしょう。子供たちばかりでなく、私もですが。

私の知らない、気づいていない伝統の中に、まだまだ「見取り稽古」のようなことが存在しているのであろうと思う、今日この頃です。