2016年3月15日火曜日

「感覚には感情があるんです」

首藤康聡(岡崎南病院)

「感覚には感情があるんです。」

そう話してくれたのは、ソフトボール日本代表の元監督、宇津木妙子氏。
彼女の講演会の中で語られていた一言です。

良い香りは心が落ち着くし、臭ければ嫌な気分になる。

好きな音楽は心が躍るけど、嫌いな音楽だと暗い気持ちになる。

大好きな人に触れられると安らぐけど、嫌いな人だと・・・

こう彼女が気付いたのは自分がチームの人間関係でうまくいかなかった時だそうです。相手のありのままを受け入れていこうという思いからそう考えるようになったそうです。決してアスリートだからといってソフトボールを行っている身体について考えたわけではありません。

さて我々は感覚に感情があるという事はきっとどこか無意識のうちに感じている事だと思います。
でもそこに彼女のように自ら気づき意識に上げ言語化するなんて事は普通できる事ではないと思います。

例えばそれはニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見する以前から物が下に落ちるなんて事は誰もが知っていた事に似ていると思います。

新たな気づきや発見は普段の何気ない日常の中に転がっているものかもしれません。

そう考えるといつもの臨床の中にはまだまだ多くの発見がきっと潜んでいるような気がします。

僕も彼女のように普段の臨床の中で自ら何かに気づきたい!

宝物を探すようにワクワクしながら臨床をやってみたい!

なんだかそんな気持ちになった彼女の講演会でした。

2016年3月3日木曜日

遂行機能障害

佐藤 郁江(岡崎南病院)

私の中で遂行機能障害と失行の違いが判らなくなっています。起こってくるメカニズムの違いはそれぞれ、前頭葉と頭頂葉の違いがあるのです。しかし、症状として現れるのは順番を間違えたり、行為が起こらなくなってしまったりと、臨床上での違いが私の中ではっきりと区別できていなかったように思います。そんな中で、注意と意欲の神経機構(日本高次機能学会教育・研究委員会編、新興医学出版社)の本の中で「外へ向かう注意の病理がいわゆる遂行機能障害であり、内へ向かう注意が再帰性意識の病理であって、これには、病態失認や、認知症における自己意識の障害を内在している」と書かれています。その外へ向かう注意を「支える神経基盤が、前頭連合野-頭頂連合野を中心とする遂行制御ネットワークである」となっているため失行と遂行機能障害は目に見える障害としては似てくるところもうなずけると思われます。しかし、治療するにあたっては問題が違うととられていかなければいけない点もあると思います。遂行機能障害は外へと向かう意識ができてこないために、開始の障害が特に目立ってくるのではと感じている。自分の中で整理できていない部分で、また皆さんと話しながら考えていきたいと思います。