2014年7月15日火曜日

身体知獲得のツールとしてのメタ認知的言語化

佐藤 郁江(岡崎南病院)

身体知獲得のツールとしてのメタ認知的言語化
諏訪 正樹著
人工知能学会誌20巻5号(2005年9月)

身体知(身体が覚え込んだ技やコツ)につての仮説が書かれている論文である。言語的意識がなくなり身体が技を覚え込んで無意識にこなすようになった時、身体知を獲得したと考えるとある。この裏づけとして、ゴルフにおける素人とエキスパートの言語的意識の違いを指摘していた。その中に奇形のパターの使用時はエキスパートでさえも熟達状態ではないため言語化か行えるとあった。そしてこの論文の中の実験で歌うことの中で言語量とパフォーマンスに相関がみられたとある。言語化とパフォーマンスの直接的な研究があり興味深かった。もちろん健常者で行われているものであり、言語化の内容もあると考えられる。言語化されにくい身体知につても言語化することの意味をもう一度考えることができた。

2014年7月1日火曜日

子どもが自ら考えて行動する力を引き出す

尾﨑 正典(尾張温泉リハビリかにえ病院)

子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング
畑 喜美夫 著 安芸南高校サッカー部監督  株式会社カンゼン

FIFA サッカーワールドカップ2014が開催されている。サッカーファンはもちろんのこと日本国民がJAPAN を応援していたことでしょう。

最近読んだ本に、私の故郷である広島の高校サッカーチーム監督の書かれた本を読みました。筆者は選手として全日本ユース代表、大学では総理大臣杯、全日本インカレ、関東選手権の3冠をとり卒業後、高校教師として故郷に帰り、監督としては全国高校総体優勝という経歴を持っています。筆者の指導の特徴は「教えない」指導法であり「自主自立の人間育成」つまり、「自分で考えて、自分で判断し行動できる」選手育成の指導である。トップダウンの指導が常であるスポーツ界においてボトムアップ理論で行う指導には賛否両論あるようですが、結果を出さなければならないスポーツにおいて全国優勝という実績を出しているということは、この指導方法は何かリハビリ治療の中で参考になることがあるのではないかと読んでみました。

認知神経リハビリテーションのセラピストと患者の関係は教師と学生の関係であり、どのようにして患者を学習させていくのか、教師であるセラピストは常に考えなければなりません。いくつか読んでいく中で私が気になった文章を挙げてみたいと思います。

・コーチが子供たちに教えすぎず、考えさせたり、創造させたりする時間を与えてほしい。
・コーチは自分の意見や主張をするのではなく、子供たちの思いや意見を聞き出し、取りまとめて組織の方向性を導く。
・すぐに「ダメだ」というのではなく、子供たち自身でどうしてできなかったのかを考えさせて、自らの打開策を導いていくのです。成功体験をもうワンステップ伸ばす問いかけをします。
・子供たちが、うまくいかなくなって苦しんでいるときに、すぐ手を差し伸べずに、子供たちが考えて解決する瞬間を見守っておいて下さい。そうしたときは、すこし距離をおいて様子を見ながら、自分で考えて解決しようとしているか、見てあげて下さい。

読んでいると伝統的なリハビリテーションがトップダウン式の指導法で、ボトムアップ理論の「考えさせる指導法」が認知神経リハビリテーションの治療に感じます。

患者自身が自分自身の身体を感じ、考え、気づく。そして、セラピストは患者の感じたこと、考えたこと聞き出し、方向性を導く。

筆者の言う「自分自身で考えて、自分で判断し行動できる」選手育成。これは認知神経リハの治療の「どんな環境にも対応できる身体の創造」と同じではないだろうか。