2015年8月15日土曜日

仮説を立てるための知識について ( 3 )

若月 勇輝(西尾病院)

前回のヒントでは,私が考える理想の知識収集方法について記載した.今回は知識収集のために必要となる論文検索方法について述べる.

論文検索は基本的にはインターネットを使用することが多いと思う.検索エンジンとしてはGoogle scholarやPubmed,Jstage,Cinii,メディカルオンラインがある.日本語論文の場合,Jstage,Cinii,メディカルオンラインを使用し,英論文の場合,Google scholarやPubmedを使用する.有料でダウンロードするのはメディカルオンラインである.無料でダウンロードできるのは,Google scholarやPubmed,Jstage,Ciniiであり,一部有料や複写依頼が必要となる.

検索エンジンに入力するキーワードによってはヒット数がかなり多くなり,どれを読めば良いかわからなくなることがある.ダウンロードした論文を全て読もうと試みたことはあるが,多くの時間を要することや,知りたい情報が何か分からなくなってしまうという問題があった.そのため,より知りたい情報に早くたどり着くためには,より的確なキーワードを入力し,論文を絞り込む必要がある.

この問題を解決するためには,疑問を明確にし,キーワードをより的確にする必要がある.私は「 PICO 」と呼ばれる方法を用いている.これは,疑問を定式化する方法であり,印象 ( インプレッション ) から臨床の疑問 ( クリニカルクエッション ) にすることができる.例えば,「 認知症患者の疼痛をどのように評価すれば良いのか? 」という疑問がある.この場合はキーワードとして「 認知症,疼痛,評価 」とするかもしれない.しかし,この3つのキーワードで検索すると,多くの論文がヒットする.ここで先ほど紹介したPICOを使用する.これは,P : patient ( 患者 ) ,I : intervention ( 介入 ) C : comparison ( 比較 ) ,O : outcome ( 結果 ) に当てはめることで,臨床での印象が,明確な疑問となる.例を参考にすれば,「 認知症患者へ ( P ) ,疼痛の評価をすると ( I ) ,健常高齢者と比較して ( C ) ,妥当なのか ( O ) ? 」といったようなはっきりとした疑問になる.この場合,キーワードとしては,「 認知症,疼痛,評価,健常高齢者,妥当 」と入力することで,「 認知症,疼痛,評価 」よりも検索論文を絞り込むことができ,自分が知りたい論文へ,より早くたどり着くことができる.実際にPubmedで「dementia pain assessment」と検索すると707件ヒットするが,「 dementia pain assessment healthy elderly validity 」と検索すると1件のヒットとなる.( 2015.8.10検索 )

読者が論文を検索するためのヒントになれば幸いである.

以下のサイトにもPICOについて解説しているので参考にして頂きたい.http://plaza.umin.ac.jp/~literis/ebm/buildingquestion.html

2015年8月2日日曜日

電車の中で

首藤 康聡(岡崎南病院)

先日、ある勉強会に参加している途中でふと思った事を書いていきたいと思います。僕は以前にもその勉強会に参加させて頂き、今回もまた改めて学びたいと思い勉強会へ申し込ませて頂きました。確か今回の勉強会の申し込みを知ったのはFacebookでした。最近は多くの勉強会の情報がSMS上でも知る事が出来る様になり、より多くの情報が僕たちの手元に届く様になってきている事に便利な世の中になったなと思っています。僕が理学療法士免許を取った頃は情報の多くは協会誌や各学会誌などで申し込みも往復はがきを使っていました。今はほとんどの勉強会がネット上で申し込みができたり、新しい情報がすぐにネットで更新されたりするので非常に助かっています。

さて、この勉強会に参加しようと意思決定をしたのは紛れもなく僕自身です。僕自身で勉強会の内容をネットの情報や過去の参加した時の印象などを考えて申し込みをしたわけです。なんでそんな事を考え始めたのか覚えてはいませんが、会場に向かう電車の中でそんな事を考えていました。そこでふと疑問がわきました。それは、その意思決定は果たして自分で行ったと言えるのかという疑問です。

確かにその勉強会に参加を決めたのは僕自身です。なんですが、その決定を下すまでにはその勉強会の情報(例えば開催日時や場所、内容、講師など)や仕事、家族の予定など様々な要件を考えて参加を決めたわけですからそこには僕以外のなにかが関わっているわけです。とするとやはり僕の意思決定は自分自身で決めたとはちょっと言えない様な気がします。別にそんな事気にしなくてもいいんじゃないと言われるかもしれませんが、もしこれが患者さんの立場だったらどうでしょう?

認知神経リハビリテーションでは患者さんに訓練中に能動的探索が求められます。この能動的探索は自分自身の意思決定なわけですが、先ほどの様に考えてみるとこの意思決定に至るまでには多くの何かが関わっていたはずです。そしてその何かには当然セラピストもいるわけです。セラピストは患者さんにとって外部環境です。その外部環境であるセラピストは患者さんの意思決定に影響を与えます。では僕たちセラピストは患者さんにどの様に振る舞えば能動的探索へと導く事が出来るのでしょうか?なかなか答えが出ないまま結局、電車が到着してしまいました。答えは一つではないかもしれません。患者さん一人一人に合わせるしかないんじゃないという意見も聞こえてきそうな気がしますが、何か良い答えはないものでしょうか。もう少し考えてみたいと思います。