2015年1月16日金曜日

目標管理のヒント

井内 勲(岡崎共立病院)

2015年、新しい年を迎え目標も新たに掲げた方も多くいる事でしょう。誰しも前向きな気持ちで目標をたて、一年間だけでなくずっと生きていく。それはセラピストである我々であれ、不幸にも疾患を患っている患者であれ同じく前向きな気持ちにて臨んでいきたい、いってほしいと思う。

昨年のフィギュアスケートで、2月のソチオリンピックにて金メダルを見事に獲得した羽生結弦選手、一年の終わり12月のグランプリファイナルでもSPでは今シーズンの世界最高スコアをたたきだし、フリーでは自己ベスト。結果は2位以下に大差をつけて優勝し、日本男子で初めて大会2連覇を果たした。その羽生選手の昨シーズンの話題は周知であると思うが、決して一年を通して明るい話題ばかりではなかった。11月の中国杯では試合前の公式練習で他の選手と激突し、頭部とあごから流血をするほどのアクシデントに見舞われ、その影響もあってかNHK杯では4位と振るわず、GPファイナルもギリギリ6位で滑り込んだ。そんな中でのグランプリファイナル完全勝利に、彼の19歳とは思えない並外れた精神力と目標への信念を感じさせられた。

ケガ、衝突の恐怖というアクシデントから短い期間での復活。そんな彼の勝利に対する姿勢、精神力を垣間見た記事が『羽生結弦を支える独特なメンタリティー 尽きない勝利への欲求、FSへの気づき』スポーツナビ(yahoo)の中にあったので紹介する。

記事は彼のNHK杯SP後のメディアに対してのコメントからである。2連覇を目指すグランプリファイナルの出場権がかかった大会でありながら、SPを5位と悔しい演技で終えた後の彼が次なる課題への気づきまでを記者が考察した内容であった。全文はこの記事を検索して頂くと良いので割愛させてもらい、印象的な部分を以下に抜粋したい。


  「メディア対応をしながら生まれた気づき」

  「やってしまったなと。悔しい気持ちのみです。けがはほとんど回復してきていますし、違和感がないと言えばそれは違うのですが、良い感じにはなってきています。4回転だけではなく、3回転+3回転もミスしてしまいましたが、曲をかけているときに、ルッツとトウループが練習からうまく入っていなかったので、そこは自分の実力の問題だと思います。自己採点は30点ですね」

   演技後、羽生は自身に対して厳しい言葉を並べた。しかし、それとは裏腹に取材対応が進んでいくと徐々に表情は和らいでいく。その理由を尋ねられると19歳の五輪王者は微笑みながらこう返した。

  「(メディアの)皆さんとお話ししていたら、自分の課題が分かってきて、それがうれしくなったんです。ただ単に失敗して悔しいというのではなく、こうすれば良かったんだというのが見つかってきたので、すごく良い時間だったなと思っています」

   多くの選手にとって、自身の望まない結果に終わったあとのメディア対応は苦痛以外の何ものでもないはずだ。しかし羽生はそれを嫌がらない。なぜなら「考えていることを言語化することで、頭の中がより整理されていくから」だ。もちろん何度も同じことを聞かれるのはきついときもあるだろうが、思いもよらぬ質問から、新たな視点が生まれることもある。
  ・・・略・・・ 
 
  「悔しい感情はプラスになる」

  ・・・略・・・
  「結局、自分の中で言い訳を作りやすかったんだと思います。練習もできていないからというね。だからこそ最終的にこういう結果(SPで5位)になってしまったんだと反省しています。6分間練習ではアナウンサーの声が聞こえたんです。その時点で集中が切れていましたね。曲がかかったときは集中していたと思うんですけど、そういうところが自分の甘さだと思います」
  ・・・略・・・
  「悔しい感情はFSに向けてプラスになると思っています。練習してきたことを信じてやっていきたいです。FSはFSでまた違う演技ですし、昨季ともまったく違います。1試合1試合違うプログラムだという気持ちでやっていかないといけないと思っています」
  ・・・略・・・
  どんなにふがいない結果に終わったとしても、羽生はその原因をあいまいにはごまかさない。あくまで強気な物言いで、自身を奮い立たせる。メディアの前でもしっかりと自分の考えを口にし、メディアを使って自身の考えを整理することさえある。根底にあるのは勝利への欲求だろう。五輪王者や、世界王者という肩書きは羽生にとって「重要なものではない」。ただ目の前の試合に勝ちたい。その強い気持ちが羽生を突き動かす原動力となっている。 


それぞれの立場や環境、色々な状況もあり、これから目標を見つめ直したり、達成のための手段を再考する事もあると思う、また再考してもらう手助けをする場面もあるかと思う。彼の前向きなメンタリティー、逆境からの気づきを支える前向きな欲求は、自分達に投射してみるとこれからの一年の目標達成のヒントになるのではないだろうか。