2013年7月15日月曜日

哲学的な何か、あと科学的とか

荻野 敏(国府病院)

飲茶 著:「哲学的な何か、あと科学的とか」(二見書房)

人をくったようなタイトル。このタイトルが、不思議と目にとまって書店で手を伸ばしていた。著者もぶっちゃけ知らない。著者紹介にも本名は書かれておらず、出身は北国生まれと。ふざけてる(笑)

気付くといつものように目次をぱらぱらめくっていた。そこに飛び込んできたのは「我思う、ゆえに我在り」「言語ゲーム」「多世界解釈」「反証主義」「ポパーの決断」などなど、好奇心を駆り立てる内容の数々!!

横書きの文字に大き目の文字で非常に読みやすい。いきなり「ルイス・キャロルのパラドックス」なるもので論理すら証明不可能なものと切り捨てる。帰納主義や反証主義などを平易に解説し、かつその問題点も挙げている。「反証主義の問題」では人間は反証すら確実に行うことはできないと。そして「ポパーの決断」ではポパーの言葉を引用して、「何らかの科学理論を構築するためには、どこかで疑いを止める地点を〈決断〉しなくてはならない」と記載している。

ドラえもんを引き合いに出して多世界解釈の解説をしたり、どこでもドアの思考実験では少しホラーチックな例を挙げてみたりと、気を抜いて読める一冊である。

こういう本を読むと、僕らが生きているこの世界は、不思議な事ばかりなんだな思える。

世界は狭い?

いやいや、世界は知らないことが多すぎるから広い!

無知の知を感じられる本だ。

2013年7月2日火曜日

中田敦彦×映画宣伝プロデューサー

井内 勲(岡崎共立病院)

NHK仕事ハッケン伝 season3「#11 中田敦彦×映画宣伝プロデューサー」(NHK総合 2013年6月27日(木) 22時00分~22時50分放送)

食後、一日の情報をチェックするためにTVチャンネルを合わせる事は多いが、この日はただ目的も無くTVの番組を模索していた。その時に偶然見付けた番組、『仕事ハッケン伝』の中に今回ヒントを感じたので紹介したい。

この番組は、毎回各界で活躍する著名人が“やってみたかった仕事”に一週間ガチで挑む姿を追うドキュメンタリー。時には自分のふがいなさに涙し、時には仲間と共に成し遂げた達成感に涙する。本気で働くからこそハッケンできる、仕事の醍醐味や、自分でも気づかなかった新たな才能。そんなアツき姿に多くの反響があるようだ。(「NHK仕事ハッケン伝」ホームページより)

さて、自分が視聴した回は宮崎駿監督、最新作「風立ちぬ」の宣伝部長に、オリエンタルラジオの中田敦彦が抜擢され、「全国紙の一面広告をデザインせよ」というミッションを課せられる。そして中田が自らの仕事感と持ち前のバイタリティーで、スタジオジブリの映画宣伝プロデューサー鈴木敏夫氏(上司)からの課題(広告の絵とコピー)を順に遂行する中でのやり取りを通じて、仕事に対して新たな志向性、仕事術をつかんでいくという内容だった。

まずもってインテリ芸人中田の仕事に対する姿勢や方法、集中力に驚かされたが、とても興味深く見入ったのはプロデューサー鈴木氏と中田との話し合いであった。この中に我々にとってのヒントいくつかあった。

・“作品”は自分一人ではできない。
・アイデアはひとりじゃ行き詰る、だからみんなと話し合う。話しながら出てくる。
・しかし関係者はルーティーン化している。
・大勢の人と話せば話すほど良いものが出来る、皆の意見を聞いて選ぶ
・また巨匠・宮崎駿氏も同様に色々と他者に聞く
など

詳細内容は、再放送が7月3日(水) 16時05分~16時53分にあるので、ぜひお薦めしたい。

我々の臨床場面でも対象に一人で向かっている時は行き詰る、しかもそれは必ずある。そんな時はどうするか、それを考えながら視聴した。
先輩、同僚、後輩に意見を聞いたり、他の視点から気づかされることも多い、また時には学生指導しているときの会話から生まれることもある。そんな話し合い、意見交換、建設的な批判の場として、日々の訓練室はもとよりetca勉強会や学術集会、さらには広い視野で多くの場を利用していく必要があると感じる。

また中田の最後のプレゼンテーション場面は、個人的に自分の臨床以外の仕事の部分でも鈴木氏の会話は胸を突いた。

・意見を出し合って人の良いところを引き出させる、アイデアを出し合う事で良いものが完成する、って事だ。
・もし『君の案はダメだから、自分で考える。』ってやったら、それはオレの負け。
・誰にでも一つは良いものを持ってる、それを引き出せなかったら僕の負け。

と・・・最近かなり自分は負け込んでいる気がした。