2013年9月17日火曜日

学力テストをやってみた―考える力 引き出す教育を―

井内 勲(岡崎共立病院)

学力テストをやってみた―考える力 引き出す教育を― 中村桂子(JT生命誌研究館館長)

先日、全国学力・学習状況調査がおこなわれ、9月11日の中日新聞、文化面にその学力テストから考察される内容を筆者の見解を踏まえ、「考える力引き出す教育を」というサブテーマにて述べられていた。

その大筋としては、4年ぶりの小学校六年生、中学三年生の全員参加のテストから、

・都道府県別の正答率の順位の関心にとどまらずに、大規模テストから見えてくるのもをていねいに考察することで、まずは平均正答率からの評価視点は難しいが、地域差が少なくなり、レベルが上がっているということがうれしい点である

・しかし日常生活をするうえで重要な力である、与えられた資料を読んだうえで自分の考えを書く、解答の理由を論理的に説明するなどの力を試す応用問題において、正答率がはっきりと低い

・応用問題に今回初めて解答できなかった児童、生徒は、「解答を文章で書く問題だったので」や「(算数でも)問題文の意味がわからなかった」と、文の内容を論理的に追ったり、文を書いたりする訓練の不足が理由としてあがっている

・重要なのはこのような児童、生徒たちがわからないからといって、最初から考える事を諦めている様子がみえるという点である

・この結果はこども達の問題としてだけで捉えるのではなく、大人である私たち自身が書かれたものをていねいに読んで、じっくり考え、自分の意見を組み立てていくこと、それを論理的に説明することを不得意としていないか

と述べている。

「考える力引き出す教育」というサブテーマを一見し、臨床場面で患者が認知問題に対して知覚仮説を自らが立て、身体を介しての情報構築する力を引き出せる良い方法のヒントがあるのでは、と安易に考えて読み進めた。

しかし筆者は、『近年情報化が進み、断片的知識ですますことがふえている。子どもは社会の鏡であり、子どもの点数をあげる方法を考える前に、大人が考える人にならなければいけないという教訓をここから引き出したいと思う』と述べている。

それは、いまし方の自分自身の臨床において、様々な知見や情報を断片的に収集しその知識をならべ、さももっともな事のように容易に納得しているのではないか、と痛感させられた。

まず患者の考える能力をあげる方法を考える前に、セラピスト自身がじっくり、ていねいに考える人にならなければいけないという教訓をあらためて認識させられた。

最後に筆者は、憲法改正を練習問題として、憲法を読みじっくりと考え、自分の意見を組み立て、小学生、中学生の関心を持たせること、そして一緒に考えることから教育を始めたら面白いとも述べている。

まずは患者自身が自己身体に関心をもつ(もってもらう)、それを一緒に考える、ということから前進したい。

2013年9月1日日曜日

ライダー変身!!!

首藤 康聡(岡崎南病院)

皆さんは仮面ライダーをご存知ですか?というか知っていますよね。○○ライダーがこんな恰好だとか、必殺技はこうだとか細かい事は知らなくてもこのヒーローの名前を聞いた事が無いという方はいないですよね。昨年(?)リメイク版の映画も上映されたサイボーグ009の原作者、石ノ森章太郎先生の代表作ですよね。って知らない方も多いですかね。1978年に初代仮面ライダーが放映されてから現在の仮面ライダーウィザードまで続いているヒーロー戦隊やウルトラマンと並ぶ日本のヒーローですよね。ちなみに現在放映中の仮面ライダーウィザードは魔法使いの設定で、次回作の仮面ライダー鎧武は戦国武将がモチーフでフルーツを使って変身するそうです。今からどんなストーリーになるのか楽しみなのは僕だけでしょうか?いやきっと小さいお子さんを持つ、お父さんセラピストも気になっているはずです。ちなみに日曜日の朝8時から朝日系列で放送されていますのでたまには童心に帰ってみるのもいいじゃないでしょうか?

さて、皆さんは小さい頃に仮面ライダーごっこをして遊びませんでしたか。きっと友達同士で仮面ライダー役とショッカー役(世代で違うし、今回の話は男性向きですね)にわかれて戦いごっこをしていたと思います。というかしてましたよね?僕らの世代だと1号と2号やV3になりきってごっこ遊びをしたんですが、皆さんは1号と2号の変身ポーズが違っているってご存知ですか?同じようにベルトの風車を回して「ライダー変身!!!トーッ」と掛け声をかけて変身するのですが、腕の動きが違うんです。ユーチューブなどで確認してみてください。そうするとその違いは一目瞭然です。

なんだかマニアックな話になってきましたが、面白いのはここからです。僕を含め、ごっこ遊びを楽しんでいた友達は1号と2号の変身ポーズの違いに気づき(情報の差異)、テレビで1号と2号の変身ポーズの違いを確認しながら実際に真似をして(視覚から体性感覚情報への変換)、次の日に友達とごっこ遊びをしてその友達に微妙な腕の違いを指摘され(他者とのやりとり)、自分が覚えた変身ポーズとの違いを修正し(内部モデルを利用した誤差学習)、家に帰ってテレビを見て「この肩の動きが違う」とか「腕の角度はこのぐらい」など様々な情報を得て(エラー情報を含めた求心性情報の統合)、変身ポーズを修正(運動プログラミングの修正)していきます。この様な事を繰り返していくと、1号と2号の変身ポーズを使い分ける事ができる(運動の自由度)ので、しっかりと1号も2号も演じる事ができるようになります。

さて皆さんこの話って少し認知神経リハビリテーションの流れに似ていると思いませんか?つまり、一見難解で理解に苦しむ認知神経リハビリテーションを皆さん自身がすでに経験しているという事なんです。認知神経リハビリテーションは麻痺からの回復を運動の再学習として捉えています。このような視点で考えると、当然学習とは何か、学習とはどのようなメカニズムで行われているのかなど多くの事を学ぶ必要があります。しかし、それは決して手の届かないような距離にあるのではなく、常に我々の身近にあり、そして誰もが経験している当然の出来事なのです。

さて、マニアのセラピストの皆さんは1号の初期には変身ポーズが描写されていない事はご存じでしょうし、もっと突っ込みたくなるのもわかります。ですが今回はお許し下さい。