2014年6月15日日曜日

ミラクルボディー

荻野 敏(国府病院)

ミラクルボディー(NHKスペシャル)
http://www.nhk.or.jp/special/miraclebody/004/

いよいよFIFAサッカーワールドカップ2014が開幕しましたね。このヒントを書いている時点で日本は・・・・・、という感じですが前向きにがんばって欲しいです。そんなワールドカップ開幕直前に2週にわたってNHKスペシャルでミラクルボディーの第4弾が放送されました。第1週目はブラジルの至宝ネイマール! 第2週目はスペイン代表です。

ネイマールの身体、そしてスペイン代表シャビとイニエスタの脳!

シャビとイニエスタは身長が低くフィジカルが弱いと言われ続けていました。しかし身体サイズを補って余りある創造性と空間把握能力!しかもそれを二人は相互に補完し合っているんです。

こんなの見せられたら、今回のワールドカップはまたスペインの優勝かなあって思っちゃいました。しかしグループリーグの蓋を開けてみると・・・・・・・・・。

ワールドカップは何が起こるかわからない!

世界中の予選から勝ち抜いてきた国の代表が、一堂に会して競い合う。そこは世界最高レベルの身体能力と脳機能の集約地。熱戦がこの地球の裏側で行われているって考えると、もうドキドキしちゃいます(笑)

見逃しちゃった方は再放送の機会は見逃さないようにしてください。そして、感覚のすごさ、脳のすごさを感じてみてください。

2014年6月2日月曜日

知覚は幻 ラマチャンドランが語る錯覚の脳科学

井内 勲(岡崎共立病院)

知覚は幻 ラマチャンドランが語る錯覚の脳科学
別冊日経サイエンス174  2010 V.S.ラマチャンドラン/D.ロジャース=ラマチャンドラン著 北岡 明佳 監修 

少し前の話だが今年のゴールデンウィークに、近隣の百貨店催事場にて「世にも不思議な科学館&錯覚美術館」というなんだかワクワクするような催しがあったので見に行た。内容は、色々な錯視の紹介や、簡単な説明、アハ体験や、色彩や陰影を使った物体の立体視の奥行の錯覚、図や斜線を使っての視覚の補完など大人から子供まで楽しめるもので、まさにゴールデンウィークは「安近短」と図っていた我が家としては充実であった。

しかしながら、個人としては若干の物足りなさもあり、もう少し科学的・心理学的な説明を・・・と、確か数年前に買った表題の雑誌を思い出し、久しぶりに開いてみた。

この雑誌においては一般書(Scientific Americanの日本版)という点で、先ずは読みやすく、挿絵や図表も分かりやすく、見やすい。そのため導入しやすい。それでいて本号の監修者である北岡氏も、「はじめに」で 『1話ごとに完結した内容だが、全体を通読すると認知科学の最前線を理解できる。・・・一般人はもとより、心理学や認知科学、神経科学を学ぶ学生向け入門書としても好適だ。』と述べられているよう に、少し専門的な部分や1話ごとに更に内容を深める為の参考文献が、「もっと知るには…」として紹介されている事に更に有難さを感じる。(当然、ほとんど英文だが・・・)

本号の目次(全30話)の一部を紹介すると、第1話:幻影が生む幻 第4話:ゴリラ効果 脳が生み出す見落とし 第8話:幻に触れる 第10話:気まぐれな恒常性 第17話:曖昧さと知覚 第22話:視覚失認 見ているのに、わからない 第28話:体外離脱 肉体から分離した自己 第29話:誇張を好む知覚 第30話:行間を読む モーダル補完とアモーダル補完 などなど

おそらくは、これらの題名から内容を推測される方も多いかと思われる。今回、自分がヒントとして感じたのは、このような知覚の曖昧さ、幻、脳の情報処理なども当然ではあるのだが、第11話:美意識の神経科学 において述べられていた箇所が気になった。

『…小さなアハ体験をもたらして、視覚処理の初期段階に注意のメッセージを送る。このメッセージがさらなる探索を促し、小さなアハ体験が繰り返されて、ついには対象が何であるかを認識して最終的な「ああ、なるほど」に至る。』『最終的なアハ体験だけでなく隠れた物体を探し出す行為そのものが快い』と言う箇所である。

なんだか、我々が患者の回復へと、学習へと促す為の「繰り返し」に似てはいないか?

その「繰り返し」には、小さなアハ体験を要し、注意のメッセージを持っているのか?

そして、患者自身は隠れた身体を探し出す為の知覚探索は快いと感じとれているのか?

今一度、考えてみた。