2011年5月1日日曜日

木を見る西洋人 森を見る東洋人

尾﨑 正典(尾張温泉リハビリかにえ病院)

木を見る西洋人 森を見る東洋人
リチャード・E・ニスベット  ダイヤモンド社

最近ふと感じることがある。日本で行われている第三の医療と言われるリハビリテーションは「日本の文化」というものを考慮し行われているのかと。欧米では靴というのは上履き、下履きと区別されているわけではなく靴は靴として内、外の境界線は無い。しかし、我が国日本は玄関には「上がり框」が存在し、内と外を分けている文化である。「文化」非常に大きなテーマである。

認知神経リハビリテーション発祥の地イタリアの文化と日本の文化は当然違う。日本には日本の文化があり、イタリアにはイタリアの文化が存在する。そこで本書である。文化の違いを知るためにそして、異なる文化の人々の物の考え方について学ぶことは、日本文化を知ることであり、自分自身のものの考え方をより向上させることができるかもしれないと思い本書を読んでみた。

本書の中で著者は、東洋人のものの見方や考え方は「包括的」であり、西洋人のものの見方や考え方は「分析的」であるという。包括的思考とは、人や物といった対象を認識し理解するに際して、その対象を取り巻く「場」全体に注意を払い、対象とさまざまな場の要素との関係を重視する考え方である。他方、分析的思考とは、何よりも対象そのものの属性に注意を向け、カテゴリーに分類することによって、対象を理解しようとする考え方である。言い換えれば、東洋人は「森全体を見渡す」思考、西洋人は「大木を見つめる」思考様式を持っていると述べている。著者は様々な実験を本書の中で紹介し両者の違いを分かりやすく説明している。その中の1つの実験にアメリカ人と中国人の大学生に3つの単語(パンダ、サル、バナナ)を示して、これらのうちどの2つが仲間であるかを尋ねたところ、アメリカ人はパンダとサルを選んだが、中国人はサルとバナナを選んだ。中国人は、「動物」というカテゴリーよりも「サルはバナナを食べる」という関係を重視したのである。また、現代の東アジア人と西洋人の認知の違いについて予測を立てている。
・注意と知覚のパターン・・・・東洋人は環境に多くの注意を払い、西洋人は対象物に多くの注意を払う。東洋人は西洋人よりも、出来事の間の関係を見出そうとする傾向が強い。
・世界の成り立ちについての基本的な仮定・・・東洋人は実体、西洋人は対象物から成り立っていると考えている。
・環境を思いどおりにできるか否かについての信念・・・・西洋人は東洋人よりも強く、自分の思いどおりに環境を変えられると信じている。
・安定と変化に関する暗黙の仮定・・・西洋人は安定を、東洋人は変化を仮定している。
・世界を体系化する習慣・・・西洋人はカテゴリーを好み、東洋人は関係を強調する。
・形式論理学の使用・・・・・西洋人は東洋人よりも、論理規則を用いて出来事を理解しようとする。
・弁証法的アプローチの適用・・・明らかな矛盾に直面したとき、東洋人は「中庸」を求め、西洋人は一方の信念が他方よりも正しいことにこだわる。

なるほどと思える部分もあるが、すべての西洋人、東洋人が著者の述べるような人たちであるとは思わないし西洋、東洋と言っても様々国がある。しかし、本書によって異文化の中で生きている人たちは、違うものの考え方、見方をして生きていることを教えてもらったのは確かである。

認知神経リハビリテーションの発祥の地であるイタリアは西洋の国の1つである。
認知神経リハビリテーションがどのような文化、世界観の中で生まれたのかを少し垣間見ることができたような気がする。

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