2012年10月2日火曜日

脳が生み出す心的イメージの謎

井内 勲(岡崎共立病院)

脳が生み出す心的イメージの謎
別冊 日経サイエンス 脳から見た心の世界part2 
発行:日経サイエンス社,2006.12.13

我々が日々の訓練で運動学習や、特異的病理のコントロールなどにおいて運動イメージを想起してもらう場面は多い。また運動イメージを使用することは、脳の活動においても実際の運動実行と運動イメージ中の活動領域にかなり共通しているという点や、運動のシステムとして、運動のプランニング、プログラムなどのより高次なレベルと関係するという点で、リハビリテーションの可能性を考慮する上で重要な意味があると言える。

しかし、臨床において患者に運動イメージを想起させるという事は非常に難渋する事も多く、本当に治療に効果的なイメージの想起が促せているのかと苦悩する。

今回『臨床のヒント』として紹介する文献は、心的イメージの生成において脳のなかで、対象の属性の関連づけによって構成されていると論ずるグループ(命題派)と実際の図形として表現されるというグループ(イメージ派)がそれぞれの論じており、未だしっかりと答えがない事や、イメージ(視覚)を思い浮かべる過程では、一次視覚野が活性化するという研究紹介など既に周知の事も多い。また、「心的イメージ」が「視覚イメージ」の内容であるため、直接的なヒントになり得るかどうかは読み手の現在の選択的注意の状況にゆだねる事がいつもより多いかもしれない。実際、自分もさらに悶々としてしまう部分もあった。しかしその中で最後の視覚表象と記憶の関連についてのエピソードが2例ほどあった。そこから日々の治療風景で、患者に「イメージしてみて下さい、出来ますか」とただ繰り返し問うだけではない、もう少し患者の回復に迫るべき運動イメージを促す為のヒントを自分は感じた。

先にも述べたようにこの文献だけでは不十分なテーマである、しかしイメージを治療のツールとする上でいかにそれを理解し、使用できるかという事はこれからも追求しなければいけない課題でもある。そのきっかけとして紹介したい

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