2011年11月3日木曜日

ことばが生まれる基盤とは

井内 勲(岡崎共立病院)

『ことばが生まれる基盤とは』  松井智子:著 科学77(6), 70-78. (2007):岩波書店

人間だけでなく霊長類の多くは、音声やジェスチャーを使ってコミュニケーションをする。しかし、情報伝達の方法としてコミュニケーションに言語を獲得し、使用しているのはその中でヒトだけである。この論文において著者は専門とする語用論(言語表現とそれを用いる使用者や文脈との関係を研究する分野)から、とくにヒトのコミュニケーションのメカニズムとその発達研究に焦点を当てる事により、著者は我々の言語が「伝達意図を理解する能力」を基盤として生まれたのかもしれないと述べている。

自分は小児の言語発達と、自閉症について知りたくこの論文を読み出した。確かにことばの発達、二項関係から三項関係のコミュニケーションでの伝達意図の理解など、全般として、1歳~3,4歳の発達研究として思慮深く読み進めた。しかしそれだけでなく、我々が治療の中で使うことば、患者が使う、もしくは使う事が出来ない、使いたくても使えないことばの奥を知る手がかりになるかもしれないと感じた。

「人間のコミュニケーションにおいて、言葉の理解は重要な役割を果たすが、コミュニケーションの最終的な目的は、話し手が伝えようとしている意図、欲求、思考、態度、感情など、言葉の意味以上の内容を聞き手が理解する事で、言葉はそれを見つけ出す手がかりに過ぎない。」

「コミュニケーションで文脈を理解するには、話し手がかなりの手がかりを提供している、それは言葉であったり、声のトーンであったり、表情であったする。加えて、もうひとつ大きな手がかりは、(略)話し手は聞き手の注意を引く。この行為が、無限にありそうな文脈を絞りこむのに重要な役割を果たすと考えられる。」

自分自身、治療を進める段階においてまだまだ上手く紐解けない部分であるが、挑戦したい。

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