2012年3月1日木曜日

自己認知と自己評価の発達とその神経基盤

井内 勲(岡崎共立病院)

自己認知と自己評価の発達とその神経基盤
筆者:守田 知代・板倉 昭二・定藤 規弘
機関名:ベビーサイエンス 2007 vol.07  pp.22-39,2008

我々が臨床場面で脳損傷により自己の身体感覚や、ボディーイメージを損傷している患者にしばしば遭遇し、そしてそれらの神経生理学的な視点を色々模索すると思う。
この論文の研究はその中の一つである。

筆者はこの研究の注目すべき点として、右前頭前野にみられた2領域(運動前野、下前頭回)の活動であると述べる。脳損傷患者の臨床的知見によれば、右側前頭前野が自己関連プロセスに関与していることは指摘されているものの、損傷部位の正確な位置を特定することが困難であるために、領域内の機能的な違いについてはあまり議論されていない。よってここでは心理学、発達心理学的な知見を背景に自己認知と自己評価の差異について、ニューロイメージング研究から明らかとなった2領域の活動パターンの違いを検討し、各領域が担う役割(運動前野は自己認知、下前頭回は自己評価)について考察している。

私見としては、『右側運動前野の機能として自己と他者を単に識別するという視覚的なプロセスだけでなく、そこから派生する自己像に対する関心や意識などに深く関連している可能性が推測される。』ということから、寝返り時に予測的に自己像を想起することが困難で手を忘れたりすることは、自己への関心や意識などが影響していることを改めて考えてみた。
また右側下前頭回は自己評価プロセスにおいて重要であり、その活動は自己評価の結果生じる恥ずかしさ(自己意識情動)の強度と関係し、『これが強く喚起されることで自己評価プロセスは抑制されてしまうかもしれない。』とある。よって自己評価プロセスの発達には『羞恥心』(ネガティブ情動)ではなく『プライド』(ポジティブ情動)が必要ではないかと予想してみた。

いかにすれば患者が自身の身体に興味を抱き、自らその身体を改変させ、環境に相互するすべを手に入れるのか。
こんな事を考え、日々模索する。

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