2012年2月17日金曜日

動作模倣における知覚と運動の変換過程に関する文献研究

林 節也(岡崎共立病院)

動作模倣における知覚と運動の変換過程に関する文献研究-理論の動向と今後の課題-
筆者:水口 崇・出口 利定
機関名:東京学芸大学紀要1部門 56 pp.149-159,2005

 高次脳機能障害の一つである失行の勉強を進めていくと、知覚と運動の変換過程についての勉強することになると思います。失行とは「学習された意図的な運動を遂行できない状態」と定義され、評価の中には物品ありと物品なしとで、敬礼やじゃんけんのチョキ・金づちの使用などをセラピストが指示を出し運動表出させたりセラピストの模倣をさせたりして、患者の誤反応を評価します。訓練では一般的には自然な場面で動作訓練や刺激促通法があげられることがあります。

 しかし、こういった訓練では、外部観察上見られる行為の部分へのアプローチが主流のように思えます。決して否定をしているわけではありませんが、なぜ模倣ができないのか?物品の使用がなぜ出来ないのか?を考えて文献を読んでも、答えが見つかりませんでした。そこで、認知神経リハビリテーションの高次脳機能障害の勉強を進めていくと、解読・変換・産生という言葉を聞き、なぜ模倣ができないのか?物品使用障害が出現しているのか?の答えが見つかったように思いました。

 この文献は、動作模倣と音声模倣における知覚と運動の変換過程について4種類の理論(Direct Mapping Theory・Active Intermodal Mapping Theory・Goal Directed Theory・Dual Route Theory)を提示し、それぞれを詳細に紹介しています。細かい内容は直接文献を読んで頂いたほうがわかりやすいので割愛させて頂きますが、新生児模倣や記憶・表象の関係。ミラーニューロンは知覚と運動が直接変換しているなど幅広い情報が記載されいます。また、今後の課題では、動作模倣と音声模倣の処理機構についての共通性を明らかにする必要性があると記載されています。
 
 高次脳機能障害は運動麻痺や関節可動域障害とは違い目に見えにくい障害です。我々セラピストは、模倣における処理機構を学ぶことで、失行患者に対するアプローチを再度見直し、患者と関わっていかなければいけません。

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