2012年12月15日土曜日

クリニカルリーズニング

進藤 隆治(国府病院)

「クリニカルリーズニング」から考えたこと
PTジャーナル第43巻第2号 特集:クリニカルリーズニング

「クリニカルリーズニング」という言葉を最近聴くが私自身はこの言葉を知らなかった。しかし、興味を持つきっかけになったのが、私も参加したいと思ってできなかったニューロセミナー臨床編において、森岡周先生の講義「神経科学を用いたクリニカルリーズニング」を聴いた先生方の多くが賞賛していたからだ。今回はPTジャーナル第43巻第2号で記載されているクリニカルリーズニングの特集を読み、その後、仮説検証について自分なりに考えたことを書きたいと思う。

クリニカルリーズニングは「臨床推論」といわれるもので、「対象者の訴えや症状から病態を推測し、仮説に基づき適切な検査法を選択して対象者に最も適した介入を決定していく一連の心理的過程を指す。この過程は、気づきとともに経験や知識に基づく理論的思考による鑑別と選択の連続で、仮説を検証する工程を繰り返している」(内山)とある。
また、学生指導にも思考過程が用いられており、「最終的には学生自身で自己フィードバック(メタ認知、批判的思考)し、自己学習ができるようになること」(有馬)とあった。

まず、自分が考えたことは仮説検証の作業の重要性である。
認知運動療法(ETC)では演繹法を用い、セラピストは「問題-仮説-検証」といった認識論的な視点から患者を捉えるが、クリニカルリーズニングでも仮説・検証といった思考過程は重要とされている。もちろん仮説検証の過程は専門的知識に裏付けされたものでなければならないが、ETCにおいても神経生理学的視点を持つことで裏付けされた情報をもとに治療が行われる。
今更ではあるが、神経科学・神経心理学といった知識を身につけ神経生理学的視点を自分なりに考察することが仮説検証を行っていく過程において重要であると実感した。

次に考えたことは仮説検証の作業における落とし穴についてである。
「仮説には帰無仮説と対立仮説とが存在する」(吉尾)とあるが、つまり証明されてほしくない仮説と説明されることが歓迎される仮説があるということである。これにより知見を集める(情報収集)際にバイアスがかかり偏った結果を導くことがあるということが指摘されている。このことからも仮説検証作業において相当な根拠のもと客観的立場で臨む必要があるといえる。
検証作業において、なぜ、良くなったか・良くならなかったか、もっと良くできなかったかどうか、他にアプローチの仕方はなかったかどうかなど、言い出せばきりはないぐらいが、あらゆる可能性を考慮しなければならない。これを行っていこうと思うと、時間との戦いもあるし、複数の患者に対して同時進行をしていくのにはかなり難しい(弱音を吐いているように思われてしまうが・・・)。だが、少しでも仮説検証を明確にしていくためにも、自分の思考過程をフィードバックし、批判的思考を付け加えて考えていくことが必要である。

今回はクリニカルリーズニングについて調べるとともに仮説検証について考えさせられた。仮説検証に対してどれだけ裏付けされた情報をもってこられるか、自分の思考過程に対して客観的な態度をとれるかといった要点を挙げた。治療において仮説検証を繰り返していく作業はより厳密に行っていかなければと改めて思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿