2014年9月2日火曜日

重度認知症患者の中枢性の痛みの評価と治療

若月 勇輝(西尾病院)

重度認知症患者の中枢性の痛みの評価と治療
( Assessment and Management of Pain, with Particular Emphasis on Centeral Neuropathic Pain, in Moderate to Severe Dementia )
Erik J.A.Scherder 著
Drugs Aging 29号 ( 2012年7月 )

臨床の中では、認知症を合併した骨折患者が多くいます。その患者が痛みを訴えますが、本当に痛いのかどうか、どのくらい痛いのか、そもそも認知症の痛みの特徴は何なのかを調べていました。最新の知見を得るために、新しいレビュー論文を探していました。

今回私が読んだ論文は、私が持っている論文の中では、最も新しい認知症の痛みについてのレビュー論文です。著者であるErik J.A.Scherderは、オランダのアムステルダム自由大学(Vrije Universiteit Amsterdam)の教育学部と心理学部の教授であり、認知症についての研究論文を多く執筆している研究者です。

中枢性の痛みは、これまで脳卒中患者を中心に語られており、認知症患者の痛みは中枢性のものということはあまり多く言われていないそうです。白質病変を生じる認知症も中枢性の痛みを生じる可能性があり、認知症患者の痛みは中枢性が最も多いのではないかと主張していました。また、認知症患者の痛みは原因が分からず、治療されないままになっていることがあり、その治療の重要性について記述していました。

認知症患者の中枢性の痛みの評価方法は、一般的な自己報告の痛みに加え、痛み行動評価を併用することが妥当だろうと述べていました。また、その他の評価には、感覚検査や脈や血圧などの自律神経系の検査、不安などの情動の評価、腱反射やバビンスキー反射などの病的反射の検査が紹介されていました。治療は投薬や電気刺激について記載されており、リハビリテーションに関しては記載されていませんでした。

中枢性の痛みは、認知神経リハビリテーションにおいても介入できる可能性があります。認知症患者に対しても、諦めずに介入していきたいと感じた論文でした。

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