2013年5月16日木曜日

尾﨑 正典(尾張温泉リハビリかにえ病院)

師  KKベストセラーズ

私は治療のヒントが何かないかと、スポーツや教育に関する書籍を参考にすることがある。指導者である師からアスリートへの指導方法は種目や性別などにより様々なかたちがある。人は人生の中で様々な師と出会い学ぶ。師の言われる一言が、後の人生に大きな影響を与えることは少なくない。

認知神経リハビリテーションのアプローチは教育的アプローチであり、患者とセラピストの関係は学生と教師の関係にある。

教師は学生にどのように教えていけば、きちんと学習されていくのかを常に考えている。私たちセラピストも常に結果の出せる治療を行うために、患者の病態を観察し思考している。

この書籍は6競技のメダルを狙う日本代表の選手たちと恩師の話が書かれている。

「育てるとはどういうことか」「教えるとはどういうことか」という悩みや、苦労を経て、どのようにそれぞれの指導者たちが、アスリートたちに指導をし続けてきたのか。また、アスリートたちを育て、一緒にぶつかってきた恩師たちの言葉が紹介されており「育てるということ」「何かを伝えること」へのヒントが書かれている。

アテネ・北京五輪平泳ぎ金メダリストの北島康介のコーチである平井伯昌氏は「選手一人一人をじっくり観察して選手に合わせたアプローチをすること」「基礎知識を大切にした上で、現場で起こっていることから学ぶっていうことをしないかぎりは、ただの空想になってしまう危険性がある」と述べている。臨床現場で私たちが治療の中でおこなうことに類似する。患者の病態は一人一人違うためセラピストは観察、評価を的確に行い、患者にどのような治療を行えばより良い結果が出せるのであろうか、リハビリテーションの知識や様々な分野から学んだ知識を総動員し、患者の脳や身体に何が起こっているのかを仮説を立て、検証していく。

この書籍は様々な種目や性別の違う中で監督、コーチが何を考え、どのように選手たちに指導したかが書かれてあり、個々の指導者の考えは異なり、様々な方法が展開されていることを知ることができる。目の前にいる患者の病態、性格、人生経験はそれぞれ異なり、決して治療者の固定化された一つの思考では適確な治療にはならない。

指導には様々な方法があり、色々な角度からの指導方法があることを知ることができ、治療の参考になる書籍である。

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