2016年11月2日水曜日

感覚はどこまで動作制御に関与しているのか

進藤 隆治(岡崎共立病院)

こないだまで、臨床実習のバイザーを行っていた。学生が認知課題をやっているところを観ると、だいたい「感覚訓練ですか?」「感覚をよくする為にこの訓練をしているのか?」といった質問をよく受ける。その際、自分は運動と感覚の「円環性」の話をして、感覚じゃなく運動を観ていることを伝えるが、相手にはなかなか理解が得られていないと痛感することをよく経験する。

今回、下記の論文を読んだので参考にしたいと想い今回のヒントを書こうと思う。

感覚はどこまで動作制御に関与しているのか -その可能性-
中川 賀嗣
神経心理学2016.Vol.32 No.2 P.181-192

動作は、以下の3つの側面において感覚によって支えられると想定されるとある。
①動作の枠組みの形成や制御に関する側面
②様々な運動パターンを獲得(学習)するという側面
③動作実行に際して、その都度生じる対象者と手(対象がない場合には手のみ)の状況を何らかの形で把握し、それに基づいて動作を調整するという側面

特に自分が気になったところは、②の内容である「学習時の感覚情報を運動パターンに織り込んでいる可能」を示唆する知見であった。
ここではパントマイム失行(観念運動失行)が取り上げられており、道具を視覚呈示しても動作の改善がみられなかったが、視覚的にはその道具とは全く形状が異なる、単なるスティック(道具の把持部分に相当)把持することで、実際の道具と同様の成績に回復することを示した。これは道具と同様の体性感覚入力を得ることで可能になったと解釈できる。つまり、体性感覚が喚起や発動された動作のきっかけとなったとのことだ。

臨床で、立ち上がりの際に下肢の支持が全く入らず全介助で移乗をサポートすることがある。こんな時は案外、足底前足部を床を押し付け圧刺激を入れてあげることで、下肢の伸筋の収縮がみられ下肢で体幹を支持することができる。運動をサポートする際に、身体のどこで、どんな感覚に注意を向けるかや、身体の認識を促していくことで運動が誘発されることがある。セラピストはどのような感覚を使って患者になんの情報を収集してほしいかを考えるで運動を組織化していくとができる。

特に片麻痺の運動の改善がみられず焦る経験をすることが多いが、感覚入力は運動を作っていく為には重要な要素であることがよく理解できた。

感覚が運動にどう関連しているのかを、今後説明していくのにかなり参考になる論文だと思い、今回は臨床のヒントで取り上げさせてもらった。

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